第1回創薬インフォマティクス研究会開催報告
創薬インフォマティクス研究会 副査・白井 宏樹
| 日 時 | 2004年6月30日午後1時〜6時 |
| 場 所 | 東京大学医科学研究所第一講堂 |
| 参加者数 | 109名 |
| 挨 拶 | 宮野 悟 (JSBi会長) |
| 講 演 |
河合 隆利 (エーザイ株式会社シーズ研究所) |
| 上田 泰己 (山之内製薬株式会社、現理化学研究所神戸研究所) |
| 宮嶋 伸行 (武田薬品工業株式会社開拓研究所) |
| 松末 朋和 (持田製薬株式会社創薬研究所) |
| 齋藤 仁之 (ヒュービットジェノミクス株式会社事業開発部) |
| 一押し製品ショートプレゼンテーション |
| 小舟 由子 (インフォコム株式会社) |
| 金田 順花 (CTCラボラトリーシステムズ株式会社) |
| 細川 幸三 (株式会社 菱化システム) |
| 総 括 | 江口 至洋 (研究会副査) |
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さて、本研究会は、会長宮野先生による「JSBiはアカデミック研究を推進するだけでなく、産業振興も目的としているため、企業の研究員が常時情報交換できる研究会を発足したい。」というご意思(命令?)を受け、それでは製薬・化学系企業、情報系企業、アカデミック研究機関のいずれにとっても興味があり、かつ相互交流が必要な分野である、創薬インフォマテイクス分野における研究会発足に至りました。いずれは新薬創製へと結び付けられる実用的でイノベイテイブなソフトウエアやDBを、本学会の会員によって海外に先駆けて創られることを目標に、「インシリコ駆動型創薬を切り開く研究会」というスローガンを作りました。第一回は創薬現場の実際を把握するために製薬・化学系企業研究員の方々を講師としてお話を伺うことにしました。また、有力な商品を販売されている情報系企業から「一押し」商品に絞っての製品紹介をお願いしました。
講演内容も製品紹介も全て素晴らしいものでした。
河合先生からは、「新規標的探索におけるBioinformatics利用」として、既知GPCRペプチドリガンドの特徴を解析して行われている新規なGPCRリガンド探索のお話に加え、自社の創薬の各過程におけるInformaticsの利用の概況、さらには実験研究員との関わり方についての紹介を頂きました。理論科学としてのBioinformaticsの紹介あり、ITとしてのBioinformaticsの紹介ありで、活発な質疑応答が行われました。
上田先生からは「システムバイオロジー」の紹介を頂きました。哺乳類体内時計のシステム同定に取り組まれており、これまでに動物における体内時計を構成する転写ネットワークを明らかにされました。本研究にはBioinformatics技術を利用した転写開始点近傍の推定プロモーター上の転写因子応答配列の決定がうまく研究に組み込まれています。活発な質疑応答の中、今後、ヒト細胞を使った研究にも着手され、リズム障害などの具体的な診断・治療指針に繋がる可能性があることに言及されました。
宮嶋先生からは、「創薬における実用的Bioinformatics」という内容で、タイトルどおりの実用的な利用法や問題点についてご講演頂きました。河合先生と同様、自社におけるBioinformatics利用の実際を概観頂いた上で、各種データベースにおけるアノテーションに結構「間違い」があることを具体例を交えて警告されました。会場からは、紹介されたあまりにひどい「間違い」に笑いが起こるなど、とても楽しい講演でした。さらにhumanPSDのアノテーションのように各配列あたり複数行のアノテーションが行われている方が、通常の一言のアノテーションよりも圧倒的に有用であることを紹介されました。日本の製薬メーカにおける戦略を問われるなど、盛んに質疑応答が行われました。
松末先生からは、「リード創製・最適化におけるInformatics利用」という内容で、世界初で承認されたファーマコフォア特許取得の内容を含めて、化合物ライブラリー作成やStructure Based Drug Designなどのお話を中心にご講演を頂きました。最近参加された英国でのChemoinformaticsの研究会において、日本の企業同士ではおそらく秘密にしているだろう内容も惜しげもなく披露しあい、率直な議論が行われていたことに感銘を覚えられたことを紹介されました。本研究会だけでなく、企業間交流の根本的な問題点を指摘された感があります。
齋藤先生からは、「ファーマコジェノミクスにおけるBioinformatics利用」として、多くの問題提起を頂きました。とくに、海外における遺伝統計学研究と異なり、国内では研究対象であるサンプルに対する拘りがないことが最大の問題であると指摘されました。確かに日ごろはハプロタイプ予測や相関解析技術といったInformaticsの実務ばかりに気をとられ、肝心の研究対象であるサンプルの集め方にまで気が回らなくなってしまっているとすればまさに本末転倒かも知れません。また、コホート研究は良質なサンプル取得の良い解決法であるが、そのコホート研究でさえ米国が先を行ってしまっていることに心配を述べられました。
また、一押し製品紹介として3社から下記の製品紹介のご発表がありました。
いずれも一押し製品だけあってとても素晴らしい製品ばかりであり、白熱した製品紹介合戦でしたが、いずれはこういった舶来製品を超える製品が国内初で開発されれば素晴らしいと思いました。
ところで当日は、恐ろしいほどの豪雨により東海地方で新幹線の運転が見合わされるという事態が発生しました。神戸から来られる上田先生はご自身の咄嗟のご判断で飛行機に変更して到着頂きました。三島から来られる松末先生は在来線に変更して長時間かけて向かって下さいました。本当にいくら感謝しても感謝し尽くせません。
残念なことに、この雨のせいで東海地方以西(例えば大阪)からの聴講を予定されていました方々からは参加が頂けませんでした。次回以降は是非ともご参加下さればと存じます。
さて、第2回研究会を2005年1月26日に今回と同じ場所で、企業側、アカデミック側の双方からの講演者により研究会を行う予定です。発表希望者を募集中ですのでどうぞ事務局までご連絡下さいませ。
また、2004年10月5日(火)京都大学薬学部記念講堂において、京都大学COEとのジョイントで研究会を開催する計画を策定中です。こちらでも発表を募集致しますのでどうぞご連絡下さいませ。
第一回の研究会の企画において、水野克也氏(山之内製薬株式会社・ゲノム創薬研究室・Bioinformatics研究員)のご協力を頂きました。ここに感謝申し上げます。
末筆ながら本研究会の講師の方々、活発な質疑応答にご参加下さった方々をはじめ雨天にも関わらずご参加頂いた全ての参加者の方々に深く感謝申し上げます。第二回以降も引き続き有益な情報交換の場として利用されることを世話役一同願っております。
以上