学会活動

日本バイオインフォマティクス学会九州地域部会セミナー (第17回BMIRC研究会)

2014.07.16

化学反応ネットワークのSensitivityFunction-freeに決定する

望月敦史(理化学研究所 主任研究員/CREST, JST)

 生体内の化学反応は連鎖的につながり、ネットワークを形成することが知られている。このシステム全体のダイナミクスを理解する目的で、反応を司る酵素に操作的撹乱を与え、化学物質の濃度変化を測定する実験がなされ始めている。しかし、そうした摂動実験の結果は、直感的理解が困難だと考えられてきた。これに対して我々は、化学反応ネットワークの構造だけから、摂動に対するシステムの応答を定性的に予測する数理理論を構築した。これにより実験的定量の難しい関数形やパラメータに依存せず、反応係数(酵素量)の摂動に対する化学物質の濃度変化を予測できる。様々な仮想的ネットワークに対して解析を行った結果、化学反応系の応答はネットワークの形と摂動を与える箇所に依存して大きく変化し、特徴的な振る舞いを示すと分かった。ここから、ネットワークの形と摂動応答を結びつける一般則を導いた。また化学反応系の摂動応答に、階層構造が現れることを明らかにした。さらに中心代謝系のネットワークに適用した例を紹介する。中心代謝系のネットワークには、未知の反応や制御が存在する可能性が高いと考えられている。実験と我々の理論を組み合わせることで、未知の制御の予測と検証を行い、実際の化学反応系を解明できると期待している。 

日程: 7月16日(水) 16:20-17:50
場所: 九州工業大学飯塚キャンパス 1101講義室
主催: 日本バイオインフォマティクス学会九州地域部会
共催:    九州工業大学バイオメディカルインフォマティクス研究開発センター(BMIRC)
連絡先: 倉田博之(BMIRC)kurata{at}bio.kyutech.ac.jp

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