学会活動

著書紹介:複雑ネットワークと制御理論(阿久津達也、ホセ・ナチェル著)

2023.06.12

近年、生体ネットワークの制御に関して、ドライバー遺伝子などの推定も含め、様々な研究が行われています。また、生体ネットワークを含む複雑ネットワーク一般の制御に関しても様々な研究が行われています。しかし、筆者らの知る限り、複雑ネットワークと制御理論の関係について明確かつ詳細に説明した本は(洋書も含め)ありませんでした。

 

本書では、グラフ理論や制御理論についての予備知識なしに複雑ネットワークに対する制御理論の本質を理解できることを目的としています。最初にグラフ理論、複雑ネットワーク、制御理論のそれぞれのエッセンスを説明した後で、複雑ネットワークに対する制御理論の核心となる構造可制御性について詳細に説明しています。そして、グラフ理論におけるいくつかの概念と構造可制御性の関係、キャビティ法を用いた制御頂点数解析、多層ネットワークの制御、バイオインフォマティクスへの応用などについて説明しています。さらに、感染症ネットワークにおけるグラフの特徴量と感染伝播速度の関係性についても説明しています。コンパクトながらもこれらのな分野の主要概念が明確に理解できることを心掛けて執筆されています。

 

本書では数学的厳密性を保ちつつも豊富な図や例を用いて、わかりやすく説明しています。その結果、2種類の読み方が可能となっています。定理の証明などの詳細は無視して例や図を主に見ることにより感覚的に当該分野の概要を理解しようという読み方と、証明なども読み演習問題も解くことにより当該分野の研究を開始するに十分な素養を身につけようという読み方です。本書が多くの方々の目に触れ、バイオインフォマティクス研究の発展に寄与することを期待しています。

 

タイトル:複雑ネットワークと制御理論
筆者:阿久津達也、ホセ・ナチェル
216頁、4,950円、2023年6月刊行、森北出版
https://www.morikita.co.jp/books/mid/081881

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