講習会特設ページ

JSBi講習会

 「JSBi 講習会」は、バイオインフォマティクス関連の講義やワークショップ等を開催する企画です。技術者としてのスキルアップを目的としたバイオインフォマティクス関連セミナーは数多くありますが、JSBi講習会では「学問としてのバイオインフォマティクス」を探究します。今回はその試験的実施として、(1)Missing heritabilityの謎解き,(2)社会へのゲノム教育,(3)個人ゲノム情報利活用のためのセキュリティガイドライン等のテーマを扱います。個人ゲノム関連のテーマに偏ってしまいましたが、このようなテーマを研究や講義に取り入れたいという教員・研究者・学生のご参加を期待いたします。


JSBi講習会1A:Missing heritabilityの謎解き(1)
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10/2(木)10:00

鎌谷洋一郎「missing heritabilityと、遺伝率推定における仮定について」

 一塩基多型(SNP)を用いた全ゲノム関連解析(GWAS)によって多くの関連遺伝子多型ならびに疾患感受性遺伝子が明らかとなった。それらは、遺伝学的、生物学的には興味深い結果を多く包含しているものの、ゲノム情報を用いたアウトカムの予測という観点からは、その予測精度は決して高いとは言えない。また、20世紀に推定されていた各疾患の遺伝率を十分説明するにも至っていない。そこで、それらの推定遺伝率とGWASによって説明できる遺伝率との差をmissing heritabilityと呼んで、それを追求するための研究が行われている。ここではこれまで行われてきた遺伝率推定について再訪し、GWASの結果との比較可能性やmissing heritability探索の方向性の検討について紹介する


JSBi講習会1B:Missing heritabilityの謎解き(2)
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10/2(木)16:50

八谷剛史「missing heritability と、ゲノム情報に基づく表現型の予測精度」

 遺伝育種の理論的な枠組みと、大規模なヒトSNPデータの運命的な出会いによって、ヒトの様々な形質についての遺伝的構造(genetic architecture)が明らかになってきた。例えば、身長や BMIなどの量的な形質や、統合失調症や脳梗塞などの疾患への罹りやすさは、比較的影響力が弱い多型が数千~数万箇所あり、その影響の積み重ねによって個々人の遺伝的体質が決定される。このことは、少数の多型情報によって表現型の予測を行っても精度は低く、ゲノムワイドな多型情報を網羅的に用いて表現型の予測を行うことで精度が向上されることを示している。ヒト個人ゲノム情報に基づく表現型予測の先行研究は主に遺伝育種の理論的な枠組に基づいており、本講演ではその中核を占めるlinear mixed model の理論と、ヒトへの適用例を紹介する。大規模なヒトSNPデータがdbGaPやEGAに蓄積されてきており、非医学系のバイオインフォマティクス研究者にとってもデータアクセスが可能になってきている。機会学習に造詣の深い方に聞いていただき、手法開発のきっかけになれば幸いである。


JSBi講習会2A:パーソナルゲノムの利活用とプライバシー保護(1)
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 パーソナルゲノム時代に突入しつつある今日、その利活用とプライバシー保護が大きな問題となっている。 この問題について議論するため、 日本バイオインフォマティクス学会の講習会として、各分野の第一人者の方々に法的・ガイドライン的な動向や技術的な動向をご講演いただき、また、民間での事例や東北メディカル・メガバンクでの事例をご紹介いただいたうえで、パネルディスカッションにおいてパーソナルゲノムとプライバシー保護の今後について 議論したい。


JSBi講習会2B:パーソナルゲノムの利活用とプライバシー保護(2)
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 パーソナルゲノム時代に突入しつつある今日、その利活用とプライバシー保護が大きな問題となっている。 この問題について議論するため、 日本バイオインフォマティクス学会の講習会として、各分野の第一人者の方々に法的・ガイドライン的な動向や技術的な動向をご講演いただき、また、民間での事例や東北メディカル・メガバンクでの事例をご紹介いただいたうえで、パネルディスカッションにおいてパーソナルゲノムとプライバシー保護の今後について 議論したい。


JSBi講習会3:ゲノム教育
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10/3(金)16:20

荒川和晴「パーソナルゲノム教育におけるパーソナルゲノムの利活用とプライバシー保護」

 アメリカには数年の遅れをとったものの、昨年から我が国でも医療を介さない消費者直販型(Direct-to-Customer:DTC)遺伝子検査ビジネスへの参入が相次ぎ、パーソナルなゲノム情報が身近なものになりつつある。一方で、DTC遺伝子検査はその解釈の妥当性などは未だ「占い」の域を出ない側面もあり、米国ではそういった観点からアメリカ食品医薬品局(FDA)が23andme社が提供する遺伝子検査の疾患などに関するレポートの停止命令を出すに至っている。このように、残念ながらパーソナルゲノム時代を受け入れる法律やガイドラインなどのシステムや、一般市民のリテラシーに関しては、技術に対して大きく遅れをとっているのが現状である。そこで、私は本学環境情報学部冨田勝教授の全ゲノム配列を解析し、一昨年度から本人の同意のもとでその配列を教材として用いる学部一年生向け講義「ゲノム解析ワークショップ」を開講しており、パーソナルゲノム時代のリテラシー教育を行っている。また、同様の試みを可能とするため、教材で利用している冨田教授の配列データを実名で公共データベースにて公開している。本講演ではこの講義の取り組みについて紹介する。


10/3(金)16:50

清水厚志「医学部における遺伝教育と遺伝性疾患患者ゲノム配列を用いたゲノム解析実習の実例」

 ヒトゲノム解読完了宣言から10年以上が経ち、その後もENCODE計画や1000ゲノム計画などのヒトを設計図から理解する試みが成果を上げている。また、GWASの登場により生活習慣病を含む多因子疾患の感受性多型が、また、古典的な連鎖解析に加えて、近年のいわゆる次世代型シークエンサーの登場により単一遺伝性疾患の原因遺伝子が、それぞれ多数同定されてきた。シークエンシングのコストは下がり続けており、特殊なシステムを利用すれば個人ゲノムの解読を10万円で行うことも可能となった。このように、ヒトの疾患を理解する上でヒトゲノムを理解することの重要性は広く認識されており、医学教育モデル・コア・カリキュラムにも記載されているが、その教育は十分とはいえない。
 演者が以前所属していた慶應義塾大学医学部では1990年代後半からヒトの疾患をゲノムの観点から理解する試みがなされ、webブラウザーを用いて疾患多型の閲覧が可能なMutationViewを用いた実習が行われてきた。演者も2006年から慶應理工学部でwebツールを用いたヒト疾患ゲノム解析の実習を開始し、2013年からはMutationViewを継ぐ形で医学部においても疾患ゲノム解析の実習を行った。
当日は、実際の実習資料を交えながら医学部におけるゲノム教育について議論したい。


10/3(金)17:20

川目 裕「遺伝医療に受診するクライエントへのゲノム教育:臨床遺伝専門医の立場から」

 近年,次世代シークエンサーを用いた母体血による出生前診断やエクソーム解析による遺伝性疾患の診断治療,発症前遺伝学的検査による個別化治療など,すべての医療に遺伝情報が遺伝カウンセリングと共に用いられようとしている.遺伝カウンセリングとは,疾患の遺伝的要因がもたらす医学的,心理的,家族的影響に対して,人々がそれを理解し適応するのを助けるプロセスであるとされ,そのプロセスのひとつに「教育」がある.古くから遺伝カウンセリングの中心は,“genetic lesson”といわれ,現場では,様々な図譜や絵を書いたり,アナロジーも用いたりして説明をおこなっている.
 多くの来談者は,今までDNA,ゲノム,遺伝子など一度は耳にしたことはあっても,疾患と遺伝情報についての「遺伝医療」の教育を受けたことはない.それ迄,自分や家族に遺伝や遺伝子のことが関わってくると予想することなく(対岸の火事)過ごしてきた人が,いざ自身の問題になることは,理解や学習意欲に様々な影響を与える.一方で,正確な遺伝の知識の理解は,心理社会的支援の前提であり,タイミングのあった情報の理解は自己コントロール感に繋がる.
 近年の個人ゲノム解析の知見が,医療における遺伝性疾患の“解釈”を変えつつあるなか,人々が納得して自身の遺伝情報を用いた医療を享受するための教育について,演者がかつて関わった遺伝ドラマ等も紹介しながら討論する.


初心者向け講習会

「NBDC講習会」は、NBDCの取り組みの中で策定した「次世代シークエンサ(NGS)解析に特化したバイオインフォマティクス人材育成カリキュラム」の一部を開催する企画です。ライフサイエンス分野の研究現場においては、莫大・多様な研究データが産出され、取り扱うデータ量が飛躍的に増えています。一方で、それらのデータを整備・活用するための人材は不足している状況です。このような研究現場の状況を踏まえ策定された上記カリキュラムは、対応が急務であると思われるNGSデータに焦点を当てた内容となっています。このカリキュラムの中で、最低限必要とされる知識・技術を2週間程度で身につけることを想定した「速習」コースを、2014年9月に開催しました。本セッションでは、上記の問題をふまえて、特に要望の多いトランスクリプトーム(RNA-seq)解析に焦点を絞り、初心者向けのハンズオン講習会を行います。具体的には、初歩的なLinux操作、RNA-seqリードのヒトゲノムへのマッピング、および遺伝子発現解析に向けたエクセルへのデータの移植までの一通りの手順を予定しています。


NBDC講習会A:初心者向けBI講習会
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10/4(土)9:00

鈴木 穣

 次世代シークエンサーの利用により、多くの実験系において従来考えられなかった速度でゲノム規模でのデータ収集が進められている。特に、ヒトのエキソーム解析あるいはホールゲノム解析により、ある遺伝性疾患の病因遺伝子の同定あるいはがん細胞の体細胞突然変異パターンの解明を試みた報告が数多くなされている。ただし、大量の塩基配列を解析、多くの塩基多型あるいは変異を同定しても、それらが機能的に意義をもつものであり、疾患の原因となっているかを必ずしも特定することはできない。しかし、RNA Seq解析あるいはChIP Seq解析等、異なる複数のアプローチから得られたデータを統合的に解釈することにより、個々の方法論的限界を少なくとも部分的には相補することが可能である。また、次世代シークエンサーを共通の検出器とした多角的なゲノム解析は、これまでの一面的な解析からは分からなかった新たな遺伝子制御機構の解明に資することができる。本講では、これら次世代シークエンサーの大規模な塩基配列決定能力を背景に行われるいわゆる多階層オミクス解析について、初歩のLINUX操作から実習する。特に網羅的にRNAのシークエンス解析を行い、そのデジタルカウントによりRNAの総体すなわちトランスクリプトームの解析を行おうという手法、すなわち、RNA Seq解析と総称される解析を主題に実習を行う。RNA Seq解析より得られたタグをヒトゲノムへマッピング、遺伝子発現解析に向けてエクセルへデータを移植するところまでの操作を学習する。
※「NBDC講習会A」と「NBDC講習会B」は、両方とも受講いただくことを想定しています。


NBDC講習会B:初心者向けBI講習会
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10/4(土)10:50

鈴木 穣

 次世代シークエンサーの利用により、多くの実験系において従来考えられなかった速度でゲノム規模でのデータ収集が進められている。特に、ヒトのエキソーム解析あるいはホールゲノム解析により、ある遺伝性疾患の病因遺伝子の同定あるいはがん細胞の体細胞突然変異パターンの解明を試みた報告が数多くなされている。ただし、大量の塩基配列を解析、多くの塩基多型あるいは変異を同定しても、それらが機能的に意義をもつものであり、疾患の原因となっているかを必ずしも特定することはできない。しかし、RNA
Seq解析あるいはChIP Seq解析等、異なる複数のアプローチから得られたデータを統合的に解釈することにより、個々の方法論的限界を少なくとも部分的には相補することが可能である。また、次世代シークエンサーを共通の検出器とした多角的なゲノム解析は、これまでの一面的な解析からは分からなかった新たな遺伝子制御機構の解明に資することができる。本講では、これら次世代シークエンサーの大規模な塩基配列決定能力を背景に行われるいわゆる多階層オミクス解析について、初歩のLINUX操作から実習する。特に網羅的にRNAのシークエンス解析を行い、そのデジタルカウントによりRNAの総体すなわちトランスクリプトームの解析を行おうという手法、すなわち、RNA
Seq解析と総称される解析を主題に実習を行う。RNA
Seq解析より得られたタグをヒトゲノムへマッピング、遺伝子発現解析に向けてエクセルへデータを移植するところまでの操作を学習する。
※「NBDC講習会A」と「NBDC講習会B」は、両方とも受講いただくことを想定しています。


中級者向け講習会

HPCIチュートリアルセッション
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 産総研ゲノム情報研究センター(CBRC)によるHPCI人材養成プログラムでは、これまで実習用PCを用いた講習会は東京(お台場)のCBRCにて開催し、一部の講座のみ産総研 関西センター(大阪)で開催してまいりました。平成26年度は新たな試みとして、東京での講習会に参加することが難しい方々を対象にした出張講習会を行います。
 その第1回として、2012年2月に東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)の設置された宮城県仙台市で開かれる生命医薬情報連合大会2014において、チュートリアルセッション「中級者向けバイオインフォマティクス入門実習講座」を HPCI 戦略プログラム 分野1と共催で実施いたします。
 本セミナーは事前に受講者募集を行い、持参いただくNote PCを用いた実習形式で行いますが、当日参加による聴講も可能です。
なお、この講習は直前に開催される HPCI Workshop(生命医薬情報連合大会2014 スポンサーセッション 10月4日(土)9:00~10:30)「生命科学におけるビッグデータマイニング -医療への実践を目指して」と連動しております。本講習とあわせ、ぜひスポンサーセッションにもご参加くださいますようご案内申し上げます。

10/4(土)10:50

門田幸二「フリーソフトRを用いたビッグデータ解析:塩基配列解析を中心に」

 フリーソフトウェアRは、マイクロアレイやRNA-seqなどから得られた数値行列からなる発現データを入力として、癌サンプルと正常サンプルなど複数の状態間で発現の異なる遺伝子を検出する手段としてよく利用される。このため、Rのステレオタイプなイメージは、統計解析ソフトであろう。しかしタイトルにあるようにRは、NGSデータ取得、GC含量やCpG解析などの基本的なゲノム解析、フィルタリング、マッピングなど多様な解析が可能である。
 本講習会では、特に統計解析以外について、Rでできることの全体像の把握を目的としたチュートリアルを行う。また、講師の過去の講習会で要望が多かったRコードの中身の説明やマイクロアレイ解析についても触れたい。具体例としては、モチーフ解析結果の描画手段としてよく用いられるsequence logos (Schneider and Stephens, 1990)と組織特異的発現パターン検出法ROKU (Kadota et al., 2006)を予定している。一見すると解析目的が全く違うもののように思えるかもしれないが、これらは内部的にエントロピーを利用しているという点で共通している。
 本講習会が、Rを使いこなせる楽しさやバイオインフォマティシャンの思考回路の一端に触れる場となれば幸いである。


中級者向けバイオインフォ入門講演会:アメリエフ
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 次世代シーケンサーを用いた遺伝子変異検出手法の一つであるExome解析を題材にして、最先端のフリーソフトの使い方やコマンド操作など実例をご紹介いたします。ご紹介する解析パイプラインは1000 Genomes Projectで用いられた、実績のある手法です。近年、次世代シーケンスデータをLinux環境で解析するためのソフトウェアが研究目的に合わせて、続々と開発されています。今回は、Exome解析だけではなく、がんサンプルのデータ解析に特化したソフトウェアも併せてご紹介致します。