● 科研費関係情報 ●


■ 文部省特定領域研究 (C) 「ゲノム情報科学の新展開」

平成12 年度は、文部省のバイオインフォマティクス関連特定領域研究として、特定領域研究「ゲノムサイエンス:ヒトゲノム解析に基づくバイオサイエンスの新展開」(代表:榊佳之)の第三班「ゲノムの生物知識情報」(班長:金久實)が最終年度を迎えることをうけて、新たに下に示す特定領域研究(C)「ゲノム情報科学の新展開」(代表:高木利久)がスタートしました(つまり今年度は例外的に二つの特定領域研究が走ってい ます)。


ゲノム情報科学の新展開

領域代表者 高木 利久 (東京大学医科学研究所・教授)
領域代表者からの申請総額42億円 研究期間 平成12年度〜16年度




<<< 生命をシステムとして理解するための革新的情報技術の開発 >>>


研究の背景と目的

ゲノム計画の進展により、膨大なゲノム情報が産生されるようになり、いわゆる実験生物学者といえども、これまでどちらかというと縁遠い存在であった計算機の世界と無縁ではいられなくなってきた。それにつれて、膨大なゲノム情報を計算機で効率良く処理するためのデータベースやソフトウェアツールを作ることから派 生してきたゲノム情報科学への期待は近年ますます高まってきており、もはやゲノム情報科学とは無縁のゲノム研究は考えることもできない上に、新しい情報理論に基づく実験法の出現によって世界の研究勢力地図を塗り替えられてしまうことも十分に考えられる。さらに、生命科学全般へゲノム計画の成果が波及するにつれて、生命現象をゲノム情報からトータルに理解しようという方法論がますます有効になり、生命科学の根幹をなす論理としてのゲノム情報研究の重要性が強く認識されるようになってきている。すなわち、ゲノム情報科学に備わる、実験データ解釈のサポート的役割とは異なる、基礎的な側面が注目されるに至っている。そこで、本特定領域研究では、他の実験主体のゲノム関連特定領域研究と緊密な連係をとりつつ、この基礎理論としての側面の研究にも力を入れる。そして、これから 5年先、10年先に確実に必要となり、それなしでは将来のゲノム研究、ひいては生命科学が成り立たないと言えるような、革新的なゲノム情報処理技術の研究開発を目指す。

研究項目の概要と期待される成果

1 .高度データベースの構築と高次生物知識の体系化

これまでの配列データに加えて、分子間相互作用データや遺伝子発現データなども統合的に扱う高度データベースの構築および高次生物知識のコンピュータ化を図る。これによって、生命現象の理解に適した新しい知識表現法(記述言語)が生み出されることが期待される。

2 .ゲノムデータベースからの知識発見

上述の高度データベースを駆使して、そこから新しい生物知識を発見する技術を開発し、ゲノム情報理解の深化に対応した、より深い遺伝子構造の数学的モデル化などを目指す。これによって、 たとえば遺伝子の上流配列からその制御内容を読み出すことが可能になることが期待できる。

3 .タンパク質高次構造に基づくゲノム情報科学

タンパク質高次構造情報のシステマティックな解析から、ゲノム機能の解明を目指し、近年注目されている構造ゲノム科学を情報科学的に支える研究を行う。この研究の進展により、従来単純なアミノ酸配列パターンの有無に基づいて行われていた遺伝子の機能予測が、より高い信頼度で行えるようになることが期待される。

4 .遺伝子ネットワークのモデル化とシミュレーション

遺伝子間ネットワークを実験データから推測したり、その数理的特性を検討する研究や、生命現象を遺伝子産物が織りなすシステムとしてとらえて、それをシミュレートするための基礎研究を行う。 この研究によって、将来遺伝子欠損などによっておこる病理現象を計算機シミュレーションによって予測する道が拓かれる。



総括班の機能

総括班では、領域全体の研究の推進及び評価、シンポジウムの企画・開催などを行う。また、総括班の中に「オントロジー整備委員会」と「ソフトウェア高速化および共有化委員会」を設けて、ゲノム情報科学全体で特に必要と思われる作業やそのための体制作りを行う。前者では、ゲノム配列情報の注釈づけなどに際して混乱の原因になる生物概念の体系化・用語の統一への基準作りや実際の用語辞書構築を行い、後者では、データの爆発的増加にも対応できるように有用なソフトウェアツールを高速化・並列化したり、ソフトウェア部品を整備して開発速度や互換性を向上することなどによって、ゲノム研究コミュニティへの研究成果の還元を促進する。


ミレニアム・プロジェクトとの関連

ミレニアム・プロジェクトでは、高齢化社会に対応し個人の特徴に応じた革新的医療の実現に向けて、ヒトゲノム計画の推進を大きな目標として掲げている。その中でも特に、バイオインフォマティクス技術による遺伝子情報の分析・活用を課題としてとりあげており、ヒトゲノム関連データベース整備やバイオインフォマティクス技術の開発を目指している。本特定領域研究では、この流れの一環として、高度なデータを取り扱うためのデータベース技術や、分子レベルから個体レベルに至るさまざまなゲノム情報の相互関係(ゲノム情報原理)の解明を目指した研究を、中長期的視点から行う。



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この高木特定の本年度の公募は締め切られましたが、来年度以降の公募にはぜひ学会員の皆さまの積極的なご応募をお願い致します。また、一般の皆さまに研究成果の一端をご紹介する場として、12月の日本分子生物学会でのワークショップ開催を現在企画中です。詳細は追って発表いたします。




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