● 研究会およびワーキンググループの紹介 ●
■ アレイインフォマティクス研究会
主査 久原 哲(九州大学大学院)
アレイインフォマティクス研究会は、平成13年8月29日、かずさアカデミアホールにおいて、第3回の研究会をワークショップ「モデル微生物のアレイバイオロジー」としてかずさDNA 研究所主催、日本バイオインフォマティクス学会共催で行った。
近年のアレイ技術の進歩と普及がめざましく、開発当初、議論の中心がアレイ技術のもつ可能性や実験技術的問題であったものが、現在では得られたデータの整理、解釈と生物学的な検証を行う段階へと移行しつつある。しかしながら、個々の生命現象や生物種をまたいだ情報交換が不足していること、膨大なデータを整理し理解するための方法論が確立していないことから、アレイ技術のもつ可能性を最大限に引き出していないのが現状である。
このような現状を考え、今回は、モデル微生物で蓄積しつつある遺伝子発現カスケードについての知見を横断的に捉えることによって、生命現象をより普遍的に理解することをめざして企画した。同時に、このような目的のために、大量の発現データをどのように分析し、その結果得られる情報をどのように整理すればよいかについても論議を行うこととした。
ワークショップは100人を越える出席者があり、大腸菌、枯草菌、藍藻、酵母、細胞性粘菌のマイクロアレイ実験と解析が紹介され、実験手法あるいは解析手法についての意見交換、討論が盛んに行われた。また、発現プロファイルデータベース、ネットワーク解析等の解析手法の紹介も行われ、その有用性等の討論が行われた。実際の解析が開始された現在、研究者間の情報交換の必要性は大きくなってきており、今後このような会を定期的に開催する必要性が感じられた。アレイインフォマティクス研究会としても次回の開催を考えていますので、ご意見ご希望をお持ちの方は、kuhara@grt.kyushu-u.ac.jp まで連絡ください。
|
■ バイオシミュレーション研究会
冨田 勝(慶應義塾大学環境情報学部)
慶應義塾大学先端生命科学研究所オープン記念シンポジウム「21 世紀の先端生命科学」
会期 : 2001年10月20日(土)〜 21日(日)
主催 : 慶應義塾大学鶴岡タウンキャンパス(TTCK )〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町14-1 |
<プログラム>
19日(金) | 夕刻より受付 |
20日(土) | 10:00 はじめに | | 冨田 勝 (慶應大学) |
| 講演 | 「細胞の再構築と機能予測」 | 金久 實 (京都大学) |
| | 「大量遺伝子発現解析からみた生命進化とバイオインフォマティクス」 | 五條堀 孝 (国立遺伝学研究所) |
| | 「マイクロアレイデータからのネットワーク推定」 | 久原 哲 (九州大学) |
| | 「マウスゲノムエンサイクロペディア」 | 林崎良英 (理化学研究所) |
| 13:30 講演 | 「有用微生物のCAD(Computer Aided Design)代 謝システム解析と今後の展望」 | 冨田 勝 (慶應大学) |
| | 「代謝システム解析と今後の展望」 | 清水 和幸 (九州工業大学/慶應大学) |
| | 「ポストゲノムシークエンス時代におけるメタボローム解析」 | 西岡 孝明 (京都大学/慶應大学) |
| | 「ポストゲノムシークエンス解析における大腸菌の意義」 | 森 浩 禎 (奈良先端大学/慶應大学) |
| 15:30 バイオラボ棟視察ツアー |
| | 16:30 ポスターセッション |
| 21日(日) | 10:00 講演 | 「枯草菌のゲノム生物学の展開」 | 小笠原直毅 (奈良先端大) |
| | 「自然がおりなす水平伝播に学ぶバクテリアゲノムデザイン学」 | 板谷 光泰 (三菱化学生命研/慶應大) |
| | 「SimWorm に向けて -線虫の体系的な遺伝子発現・機能解析」 | 小原 雄治 (国立遺伝学研) |
|
| | 11:30 パネル討論 | 「21世紀を担うバイオインフォマティクス」 | 話題提供者 |
| | | 北野 宏明 (ソニーCSL) |
| | | 小長谷明彦 (北陸先端大) |
| | | 宮野 悟 (東京大学) |
| | | 冨田 勝 (慶應大学) |
|
■ 一般向け講習会ワーキンググループ
主査 美宅 成樹 (東京農工大学工学部)
第6 回バイオインフォマティクス講習会「ヒトゲノム計画とインターネット」
〜生物科学とコンピュータ技術の融合〜坂井寛子、美宅成樹(東京農工大学工学部)
教育関係の活動は継続が重要であるということで、毎年夏にバイオインフォマティクス講習会を行ってきた。以下、今年の講習会について、簡単に報告することにする。
昨年は予想以上に多くの参加者が集まり、ゲノムに対する社会的関心の高まりを実感させられた。今年はより多数の参加者に対応できるよう、7月20・21日の2日間にわたって開催した。しかし、期待に反して、参加人数は昨年より減ってしまった。ただ参加者は皆とても意識が高く、充実した講習会になった(表1)。この講習会の対象は本来高校生ならびに中・高教諭だが、インターネットで講習会の開催を知った大学生なども若干名参加していた。2日間の講習会の司会進行は美宅が務めた。
1日目は東京大学医科学研究所アムジェンホールにて、(1)中井謙太先生(東京大学医科学研究所・ヒトゲノム解析センター)「ゲノム情報からどうやって生物的意味を見出すのだろう」、(2)秋山泰先生(産業技術総合研究所・生命情報科学研究センター)「ゲノム情報の解析に並列コンピュータはどうして必要なのだろう」、(3)五斗進先生(京都大学化学研究所・バイオインフォマティクスセンター)「ゲノム情報のデータベースって何だろう」、(4)服部正平先生(理化学研究所・ゲノム科学総合研究センター)「ヒトゲノム(21番染色体)はどのように解析したか」、の4つの講義、その後ゲノムセンターのスーパーコンピュータ室・榊研実験室の見学が行われた。
参加者からは「少々難しいこともあったが、大学で活躍されている方々のお話を聞けてとても良かった。」「分野の領域のない講義で、視野が広がった気がした。」、ゲノムセンターの見学に対しては「巨大な機械を使っていて、世界的にもひけをとらないということが納得できてよかった。地道な作業かもしれないが、とても大切な仕事?研究であると思った。」初めての体験なので、見るものすべて珍しい。」といった率直な感想が寄せられた。
2日目は東京農工大学総合情報処理センターに会場を移し、広川貴次先生(産業技術総合研究所・生命情報科学研究センター)の指導でコンピュータ・インターネットによる生物情報の検索実習が行われた。(写真1・2)「とても解りやすい解説で、教えていただいてよく理解できたと思います。学生の皆さんのサポートも大変によかったです。」(教員)、「あまりコンピュータを使ったことはなかったけど、グラフィックや動物と人間との比較などができ、とても楽しく理解することができました。」「こんなにも専門的な情報がFreeで公開されているのかと驚きました。遺伝子の配列情報を使って生物の類縁関係を調べたのが一番面白かったです。」(高校生)と、非常によい反応であった。ゲノムというキーワードについては物珍しさ
は薄れたが、本当の内容を正確に伝えていく活動は今後とも非常に重要であると感じた2日間の講習会であった。
(表)講習会参加者数
| 今年 | 去年 |
教員 | 16(11) | 24 |
生徒・その他 | 50(30) | 111 |
合計 | 66(41) | 135 |
|

|
 |
|
(写真1)講習会のようす。講師は広川氏。 |
(写真2)参加者は気軽にアシスタントに質問できる。時には美宅先生も参加。 |
|
TOPページへ ● 前のページへ ● 次のページへ