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ISMB2001 (Intelligent Systems for Molecular Biology) に参加して


八尾 徹(理化学研究所)


 本年7月22日から25日までコペンハーゲンで開かれたISMB2001に 参加した。ISMBは第9回を迎えたが、数年前までとは様変わりで、約 1300名の様々な分野の人が集まる大きな会に成長した。当初の情報 科学系研究者主体の会から、生物学・医学の人や企業研究者など幅 広い関係者を含めた会になり、テーマも遺伝子発現,タンパク質,ネット ワーク等ポストゲノム解析が多くなって来た。サテライトミーティング及び チュートリアルも非常に多岐に亙り、新しい分野や技術が急速に広が って来たことを感じさせる。全体に活気が漲っていた。

参加者1300人
招待講演7件
口頭発表38件(180件から選抜)
ポスター350件
サテライト6セッション
チュートリアル14件
企業サポート22社
テーマ
1)タンパク質構造・モデリング
2)配列機能解析
3)ネットワーク・モデリング
4)遺伝子構造・制御・モデリング
5)系統樹
6)新技術
特別テーマ
1)バイオエシックス
2)知的所有権とビジネス
サテライト
1)BioPathway
2)SIGSIM
3)オープンソース
4)オントロジー
5)教育
6)文献情報
チュートリアル
1)機械学習
2)蛋白質分類
3)マイクロアレイ
4)発現解析
5)遺伝子ネットワーク
6)バーチャル細胞
7)文献検索
8)オントロジー
9)ユーザーインターフェイス
10)XMLデータベース
11)LINUXクラスター

私が特に注目したのは、7人の招待講演者の中4人が著名なタンパ ク質研究者であったことである(C.Dobson, C.Sander, D.Eisenberg, G.Heijne)。タンパク質研究の指導的な立場にある人 たちが、情報科学の重要性を認識し、このような会で講演されることは、 両分野のより一層の融合によるバイオインフォマティクスの今後の発展 にとってきわめて望ましいことであると思った。
ワークショップでは「バイオパスウエイ」に参加した。「バイオパスウ エイ」は3回目で、参加者は大学・公立研・医薬企業・専門企業など多 岐に亙っているが、特に専門企業がいくつも出来ているのが目立った。 (Physiome Sciencs, Beyond Genomics, Entelos, Protein Pathways, Cell Signaling Technologyなど,ほかに既存のMSI, LION なども手掛けている)
生命現象をシステムとしてとらえ、そのモデル化,シミュレーションを進 めることによって、生命現象の理解と病気の解明や創薬・診断・治療 に役立てようとするのが共通の目標である。ゲノム配列・遺伝子発現・ 蛋白質相互作用などの多様で膨大な情報から、どのように生命システムの 構築を進めて行くかには、まだまだ基礎的な研究課題も多いが、 すでに応用を目指しての研究開発が急速に進んでいるという感想を持った。
東大宮野教授をはじめ7つの研究紹介があり、最後にパネル討論 会が開かれた。R. Aviv (テルアビブ大) の見事な司会で、1)データ (種類, ソース, 信頼度,種間比較など)、2)モデル作り(タイプ,規模, 作りかた,計算可能性など)、3)説明(表示, 検証, 説明)について討 議がなされた。
もう一つのワークショップ「SIGSIM」でも慶応大冨田教授のリーダ ーシップでバイオシステムシミュレーションが討議され、サテライトワークシ ョップの1/3はシステム生物学関連ということになった。この分野の関 心の高まりを示すものである。
一方、「バイオソフトのオープンソース化」の流れも急速な動きであり、 この流れにどのように対応していくかも重要な課題となってきた。
更に、このワークショップ参加者全員に対し、最近発足したばかりのI 3C(Interoperable Informatics Infrastructure Consortium) の紹介があった。これは各種のソフト,データベース間をスムースにつな ぐためのインフラを作ろうとするもので、ソフトメーカー,コンピュータメーカ ーなどとユーザーが結束した大きな団体に発展していきそうである。 (www.i3c.open-bio.org, www.i3c.org)。IBMのDicoveryLinkとINCOGEN のVIBEとLabBookが中核に置かれ、その間をXMLで結ぶ 図が示され、メーカー主導の印象を持った。
最初にも述べたが、ゲノム解析・ポストゲノム解析における情報技術 の重要性が急速に高まり、このような学会の役割は非常に重要である。 そのような場に多くの分野の人が自由に参画して討議することから新 しい研究の発展が期待できる。日本でもより一層の異分野交流を深め てほしいと思う。


文部科学省特定領域研究C「ゲノム」班会議報告

森下 真一(東京大学大学院 新領域創成科学研究科/情報理工学系研究科)


<<< 好評を得た「有用ソフトウエア・DBの紹介」 >>>

文部科学省科学研究費の特定領域研究C「ゲノム」4領域の合同 班会議が、2001年8月22日(水)から25日(土)まで、神戸ポートピアホテ ルにおいて開催されました。開催初日の22日は、台風の日本列島横断 によって航空機および新幹線のダイアが大幅に乱れた日なので、記憶 にある方も多いと思います。実際、会議は1時間ほど遅れて開催されま したが、交通機関の回復に伴って参加者が徐々に到着し、本領域がス タートして1年半が経過した時点としてふさわしい密度の濃い研究報 告がなされました。
90%以上のヒトゲノム配列情報の解読、大規模かつ正確なcDNAライ ブラリーや100万箇所を越えるヒトSNP情報の公開、次々と解読されるモ デル生物のゲノム情報、そしてマイクロアレーを中心とした高処理量の 発現量観測装置の普及で、大量のゲノムデータを解析する技術に関 する期待が大きいことは言うまでもありません。班会議では、研究代表 者51名が研究報告を行い、さらにポスター発表も開かれ、大量ゲノム データの解析方法およびタンパク質立体構造予測手法についての発 表が相次ぎました。
「ゲノム」4領域は、統合ゲノム・ゲノム医科学・ゲノム生物学そしてゲ ノム情報科学から成り立ちますが、ゲノム情報科学の活動を他の領域 の研究者にアピールするために「有用ソフトウエア・DBの紹介」という セッションが、4領域の全体会議中に持たれました。ゲノム情報科学の 班員が開発したソフトウエアの中で、既にWWWから利用されているか、配 布可能な製品レベルに達したシステムを12個選別して、各5分間の持 ち時間で手短にモットーを紹介しました。特筆しなければならないのは、 このセッションの評判が非常によかったことです。
ゲノムデータが公表されつつある現在、その解析技術をユーザーが 使えるように提供しないと、あまり関心をもってもらえない、一方で公開中 の有用なソフトウエアは賞賛を受けるという段階へシフトしていることを 実感します。もう少し先進的な試みを紹介すれば、CASP, CAMDA, ACM KDD cupなどのコンテストにおいては、同一のバイオデータに対し て、数多くの参加チームが、予測精度を競うようになってきております。こ のように、データの公表が進んだ結果、ユーザーである生物学者や医 科学者が自らデータ解析ソフトウエアの質を比較検討できるようになっ てきております。したがって、ゲノム情報科学としても班員が研究開発し た有用なソフトウエアを、班会議を含め様々なイベントで紹介してゆき、 我々の活動を広めてゆきたいと考えています。
次回のゲノム情報科学・班会議は2002年1月11日から13日まで、東京 お台場の東京国際交流館プラザ平成で開催予定です。12日は公開シ ンポジウムを開催し、再び「有用ソフトウエア・DBの紹介」のセッションを 持つ予定です。




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