学会概要

設立趣意書

1999年10月27日(起草)

1980年代の終わりに始まった「ヒト・ゲノム計画」では、生命の基本データであるゲノムが、ヒトからバクテリアまで100種を越える生物についてシステマティックに解析され、すでに20以上の生物種についてその全ゲノムが決定されています。こうした発展は配列データをはじめとして大量のデータを生み出し、コンピュータ技術の利用なしには展開していくことが不可能な状況を作り出しました。そして、人間がデータ解析をする際の手助けとしての情報処理からさらに発展して、生物種の配列情報、遺伝子発現情報、ゲノム変異情報、細胞レベル、個体レベル、生物種レベルの情報、そして自然界における生物界の情報が明らかにされる中で、生命科学全般の情報化が引き起こされています。バイオインフォマティクスと呼ばれる新たな学問分野は、こうした背景のもと広くその重要性が認識され、21世紀のキーとなる学問分野へと発展しようとしています。

バイオインフォマティクスは、遺伝子情報の分析や活用により、実際に生命のシステムを、少なくともその一部を、コンピュータの中に再現することを可能にしようとしています。そして、生命の情報構築原理をコンピュータの中に実現していくことにより、たとえば、環境汚染物質を分解する生物種のデザイン、生態系の反応経路にマッチした工業製品化、ネットワーク予測に基づく病因遺伝子の探索、ダイナミックな応答予測に基づく治療薬の開発、といった応用研究の可能性が開かれていくものと思われます。こうしたことから欧米では、バイオインフォマティクスが、職業としてまた研究分野として高く位置付けられようとしています。また、国際的な組織としては、International Society for Computational Biology が設立され、研究、教育、産業にわたって各国からの考えが求められています。

21世紀における生物学および医学の分野、ひいては科学の発展のためには、バイオインフォマティクスの発展が不可欠です。このためには、バイオインフォマティクスの基礎研究とその応用、バイオインフォマティクス教育、そしてデータベースやネットワーク等のインフラ構造の整備、さらには生物情報の知的所有権にいたるまで、真剣に取り組み、提案ができる学会が必要です。

そこで、我国において、このバイオインフォマティクスという学問分野を発展させ、その技術および関連事業の振興ならびにバイオインフォマティクスの教育基盤を確立するため、日本バイオインフォマティクス学会の設立を発起するに至りました。

日本バイオインフォマティクス学会設立発起人

  • 秋山  泰
  • 阿久津達也
  • 浅井  潔
  • 麻生川 稔
  • 有川 節夫
  • 池村 淑道
  • 石田  亨
  • 磯山 正治
  • 市吉 伸行
  • 井原 茂男
  • 伊庭 斉志
  • 今井  浩
  • 内山 郁夫
  • 江口 至洋
  • 大久保公策
  • 大山  彰
  • 岡本 正宏
  • 荻原  淳
  • 鬼塚健太郎
  • 金谷 重彦
  • 金久  實
  • 北上  始
  • 北野 宏明
  • 北村 泰彦
  • 久原  哲
  • 小長谷明彦
  • 後藤  修
  • 五斗  進
  • 斉藤 成也
  • 榊原 康文
  • 佐藤 賢二
  • 皿井 明倫
  • 篠原  武
  • 篠原  歩
  • 清水 俊夫
  • 菅原 秀明
  • 陶山  明
  • 諏訪 牧子
  • 高井 貴子
  • 高木 利久
  • 高橋 由雅
  • 田中 秀俊
  • 田畑 哲之
  • 辻井 潤一
  • 寺野 隆雄
  • 藤  博幸
  • 冨田  勝
  • 中井 謙太
  • 中島 昭英
  • 中田 琴子
  • 中西 憲之
  • 中村 春木
  • 永井 啓一
  • 西岡 孝明
  • 西川  建
  • 新田 克己
  • 根本 靖久
  • 萩谷 昌己
  • 橋本 昭洋
  • 菱垣 晴次
  • 広澤  誠
  • 深川 浩志
  • 深川 正夫
  • 福島 信弘
  • 伏見  譲
  • 藤田 芳司
  • 藤山秋佐夫
  • 古市恵美子
  • 松尾  洋
  • 松田 秀雄
  • 松本 裕治
  • 馬見塚 拓
  • 水島  洋
  • 美宅 成樹
  • 蓑島 伸生
  • 宮野  悟
  • 森下 真一
  • 森  浩禎
  • 安永 照雄
  • 矢田 哲士
  • 山本 健二
  • 横田 一正
  • 横森  貴
  • 米澤 明憲

設立趣旨書

1 趣旨

今日、ゲノムのデータに代表される生命についてのデータがその量を爆発的に増大させ、コンピュータと情報科学技術の利用なしにはそれらの解析が不可能な状況を作り出しました。これを解決するために、生物学・生命科学・情報科学を融合したバイオインフォマティクスという新たな学問分野が形成されるに至りました。バイオインフォマティクスは、生命科学や医学の分野が発展する上で必要不可欠な分野であることが広く認識されています。

このような背景のもと、日本バイオインフォマティクス学会は平成11年に設立され、バイオインフォマティクスの教育と研究を発展させるために、年会、研究会、地域部会、並びに国際会議の開催等の活動を行ってきました。また、バイオインフォマティクスにおける教育と人材養成のための事業として、バイオインフォマティクス教育カリキュラムを策定し、バイオインフォマティクス技術者認定試験を実施してきました。

以上の活動実績を踏まえ、任意団体である本学会が設立から12年を迎えるこの機会に、特定非営利活動促進法に基づく法人格を取得することにより、今後の活動基盤の安定と社会的な信用力向上を目指し、ここに「特定非営利活動法人 日本バイオインフォマティクス学会」として再出発したいと考えます。そしてバイオインフォマティクスに関するより一層の研究・教育を推進するための活動、またその普及啓発活動を行い、学術文化の発展を通して、人類の生活水準の向上・繁栄に貢献します。

2 申請に至るまでの経過

日本バイオインフォマティクス学会では、毎年、年会を1回、システム生物学や創薬インフォマティクスなどの専門分野の研究会をそれぞれ数回ずつ開催するのに加えて、北海道、東北、関西、中国・四国、九州、沖縄の地域部会を立ち上げ、地方におけるバイオインフォマティクスの振興にも積極的に取り組んできました。さらに、海外の関連学会との連携促進も積極的に行っており、ISCB(International Society for Computational Biology、国際情報生物学会、本部アメリカ)の地域アフィリエイトグループとして、またAASBi (Asian Societies of Bioinformatics、バイオインフォマティクスアジア学会連合)というアジアの関連学会の連合体のメンバーとして活動してきました。

平成22年3月29日開催の評議員会にて、今後の学会の運営においては、法人格を取得し、法人として契約できることが必要であるとの提言があり、学会の法人化について検討することを決議しました。その後、平成22年6月30日開催の評議員会にて、特定非営利活動法人への移行準備を進めることを決議しました。以上の結果を受けて、設立申請書類の案を作成し、メール審議にて評議員会での議論による修正の後、学会会員にメールで周知して意見を招請し、平成22年12月14日開催の総会にて、特定非営利活動法人 日本バイオインフォマティクス学会の設立を決議するとともに、平成23年6月22日に法人の設立総会を開催しました。

平成 23年 6月23日

特定非営利活動法人日本バイオインフォマティクス学会

設立代表者  氏名   松田 秀雄  印

設立総会

1999年12月13日に恵比寿ガーデンプレイスで開催された日本バイオインフォマティクス学会設立総会の動画(初代会長 金久實 挨拶 および International Society for Computational Biology 会長 Lawrence E. Hunter ビデオメッセージ)を、金久實先生のご好意により以下に公開いたします。

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