学会概要

 

会長挨拶

ビッグデータ時代の生命科学を先導し、

新たな領域を切り拓くために。

日本バイオインフォマティクス学会 会長

岩崎 渉

2019年5月8日

2019年4月より、日本バイオインフォマティクス学会(JSBi)の会長を務めさせていただくことになりました。生命科学と情報科学が融合した学問領域であるバイオインフォマティクスに関する研究・教育を一層推進するため、微力を尽くしていければと考えています。

ここでは、私が学会の現状と展望に関連して重要だと考えている課題のうち、特に三つの点について述べさせていただければと思います。

第一は当然のことですが、本学会が本来のポテンシャルを最大限に発揮できるよう、さらに発展させていくことです。昨今では、学会の存在意義や統合に関する踏み込んだ議論もしばしば行われるようになりました。私としては、そうした議論があることも認識した上で、バイオインフォマティクスという学問分野の需要と近年の急速な発展、これまでの歴史を通じた産学をまたぐ人的ネットワークや融合分野の幅広い領域にわたる知見の蓄積、さらには医学・薬学・農学・環境学なども含めた生命科学全体におけるその本質的な存在意義を踏まえて、ぜひ周辺分野も含めより多くの方に本学会に参加していただきたいと考えています。とりわけ、本学会の中心的な活動である年会や公募研究会については、年会実行委員会や公募研究会主催者と学会本体との有機的な連携を深めつつ、引き続き、さらに魅力的かつ効果的なものにしていくことが望まれるでしょう。また本学会が実施しており、昨年には史上最多の受験者が臨んだバイオインフォマティクス技術者認定試験などの活動もまた、大きな盛り上がりを見せています。本認定試験を含む教育関連事業、学会賞、ニュースレター、他学会や関連企業との連携、学会ウェブサイト、政府や社会に対する発信などのあり方も含めて、正会員・学生会員・賛助会員の全ての学会員にとってより有意義な学会となるよう、みなさまのご意見を伺いながら前向きに展開させていければと考えています。

第二は、バイオインフォマティクスの未来の姿を議論し、また発信していくことです。今年は、1999年に設立された本学会の20周年の節目にあたります。この間、生命計測技術と、いわゆる人工知能技術を含む情報科学の長足の進歩によって、バイオインフォマティクスの位置付けは大きく変わり、あらゆる生命科学分野に必要な基盤としての役割も確固たるものになりました。そうした近年の発展や需要の大きさを踏まえた上で、バイオインフォマティクスのための中心的なコミュニティである本学会には、バイオインフォマティクスに関する研究討議や交流を行う中心的な場としての役割にとどまらず、生命科学の諸分野をまたぎ、情報という観点から俯瞰し、関連分野を先導するようなビジョンを示していく場としての役割が期待されるのではないかと思います。その過程では、激しくまた絶え間ない学問の展開の中でも、改めてバイオインフォマティクスとはどのような学問なのかを見つめ直し、これまでの研究の流れにとらわれない議論を行い、新たな領域を切り開いていくことも必要になるでしょう。そうした機運を醸成するための企画も、学会として進めていければと考えています。

最後に第三は、本学会の運営を安定的かつ持続可能なものにすることです。改めて強調するまでもないことですが、運営の安定性は、学会が様々な役割を果たしていく上で、決定的な基盤をなすものです。もともと本学会の運営は、一部の先生方の献身に依存してきた部分が大きくありました。そうした"手弁当"の運営形態を改善することを目指した、関係の先生方の近年の尽力の成果として、現在では、抜本的に再構築された幹事会、庶務を担当する内部事務局、そして会員管理・会計・法人業務を担当する外部事務局の三者が連携した新たな体制が構築されつつあります(学会員の方のなかには、例えば学会ウェブサイトの改善などにそのような変化を感じられている方もいらっしゃるかもしれません)。その一方で、課題もまだ多く残されています。まず、幹事や地域部会長など学会運営に携わる役員の引き継ぎ、そして年会運営の引き継ぎを、より円滑に行えるようにすること。さらに、理事会・幹事会においては長期的な視野からより本質的な議論を行えるように、かつ、そうした議論の結果をきちんと実装に繋げられるように、枠組みを整えること。事務局業務に関する明文化をさらに進め、将来的に事務局の再移設を調和的に行えるようにすること。そして、学会会計について精査を行い、会計面からも持続可能な体制を築いていくこと。いずれも華々しい性質のものではありませんが、積み重ねによって今後の本学会の姿に大きな影響を及ぼしていく、極めて重要な課題だと捉えています。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

 


 
2021.3.31掲載
 

2019-2020年度学会長より退任のご挨拶 

 

日本バイオインフォマティクス学会会員のみなさま

2019年4月より会長に着任し、この3月をもって2年間の任期を終えることになりました。
任期中は、学会活動に対して多大なご支援やご参画をいただき、改めて感謝申し上げます。

学会の現況については年会中のJSBiタウンホールミーティング等でもご報告してきましたが、ご参加いただけなかった会員の方もいらっしゃると思いますので、退任のご挨拶を兼ねて、この2年間の報告をさせていただきます。

JSBiの会員数はこの2年で大きく増加し、500名強から800名近くまでになりました。これはバイオインフォマティクス分野が改めて大きく発展していることの反映でもあり、大変嬉しく思っています。
会員数の増加は効果的・安定的な学会運営の上でも極めて重要であり、引き続き、こうした傾向が続いていくことを願っています。

JSBiの重要な事業である、バイオインフォマティクス技術者認定試験についても大きな展開が見られました。
受験者数も大幅に伸び2019年度には500名を超えたほか、Computer Based Testへと実施方式の大きな転換が行われ、全国各地のテストセンターで受験することが可能になりました。
本試験の公式参考書である本学会編集の『バイオインフォマティクス入門』の発行部数も、累計1万部を突破しました。

1999年に設立されたJSBiは、2019年に創立20周年を迎えました。
この機会に学会ニュースレターのデザインを抜本的にリニューアルし、より魅力的な誌面としてお届けできるようになりました。
学会ロゴもリニューアルされ、以前のロゴのテイストは継承しつつ、現代的で、学問分野の広がりや多様性を表現したものになりました。
さらに、DOIも付与される日本語総説誌として「JSBi Bioinformatics Review」を創刊しました。
これにより、バイオインフォマティクス分野で先端的な研究を行っているJSBi会員自身による、総説論文をお読みいただけるようになりました。

学会ウェブサイトもデザインリニューアルを行い、内容の充実と整理を行いました。ウェブサイトは学会の「顔」としての役割をもちますが、JSBiの魅力が伝わるウェブサイトになったのではないかと考えています。
(もしリニューアルに伴う不具合を見つけられましたら、お手数ですが学会事務局までご連絡いただければ幸いです)
他にも、学会員向けのサービスとして論文・受賞・新刊を紹介するコーナーを開始したほか、学会twitterを開始・運用し、フォロワーも950名を越えました。

学問分野や学会の発展においては、それに貢献された先生を学会として称え、位置付けていくことが重要ですが、これまでJSBiにはそうした仕組みがありませんでした。
そこで学会名誉会員の就任手続きを整備するとともに、「日本バイオインフォマティクス学会賞」を新たに創設し、第一回の同賞を中井謙太先生に授与させていただきました。
来年度以降も、若手研究者賞にあたるOxford Journals - JSBi Prizeとともに、多くの推薦をいただければ幸いです。

この2年間には、2回の年会が開催されました。大型台風の接近やオンライン対応などの大変な苦労の中、年会を盛況のうちに開催していただいた年会実行委員の先生方に、改めて心から感謝いたします。
年会では新たに正式に学会枠を設置し、学会の現況をお伝えする場としてタウンホールミーティングを開催するとともに、記念講演などを行ってきました。
特に2020年オンライン年会は1,000名を超える方に参加いただくことができ、歴史に残る年会となったのではないかと思います。

もう一つの大きな目標として、学会運営の安定化にも取り組んできました。
学会の運営体制として、一般社団法人学会支援機構に会員・会計・法⼈業務を外部委託するとともに、JSBi特有の総務業務を内生化するシステムを整えたことで、幹事の先生方とともに運営業務を安定して進められるようになりました。
またJSBiは慢性的な赤字構造を抱えていましたが、これについても、完全な解決へはまだ道半ばですが大幅な改善を行うことができたと考えています。

他にも、これまで理事会のメール審議が定款において定められていなかったものを明文化したほか、定款・細則・諸規則を現状に合わせるための大幅な改訂を行いました。
学生会員に理事選挙への投票権を付与することで、学生会員のご意見も学会運営に反映できるようになりました。
理事会のジェンダーバランスについても、大きな変化が見られました。特に、2020年度新理事の半数は女性となりましたが、これは学会の歴史の中でもこれまで無かったことです。

最後に、JSBiではこれまで、次期会長を理事および新理事候補者による投票によって選ぶ方式をとってきました。
しかしこれには、学会運営の実質を担う幹事を次期会長が指名することができないという問題や、長期的な展望をもった学会運営が難しいことなどの大きな弊害がありました。
そこで、昨年の理事会において細則の変更をお認めいただき、会長ではなく、会長予定者としての副会長を選挙によって選ぶ形式へと変更を行いました。
これにより、JSBiの運営が、より効果的かつ長期的展望に基づいたものになるものと期待しています。

2021年度からの会長は、現在の副会長である五斗先生に務めていただくことになります。
改めて、みなさまに感謝申し上げます。引き続き、学会活動へのご支援・ご協力をいただければ幸いです。

2019-2020年度 日本バイオインフォマティクス学会長
岩崎 渉 

 

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