学会活動

バイオインフォマティクス技術者認定試験 受験体験記

2022年度

大鵬薬品工業株式会社

畑中 良(2022年度首席合格者)

 

  1. 1)受験の背景

私は製薬会社に勤務しており、受験当時は研究職として主にバイオインフォマティシャン及びファーマコメトリシャンとして働いておりました。しかしながらバイオインフォマティシャンとしての経験が浅かったため、バイオインフォマティクス全般の知識を蓄えることで俯瞰できるようにし、かつスキルアップを目指して受験することといたしました。

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  2. 2)試験勉強

「バイオインフォマティクス入門」を2-3回読み、並行してHPに載っていた過去問を何年分か解き進めました。今でこそエンジニア系の業務も行っていますがもともとは完全にwet系の生物系研究者だったため、詳しくは知らなくても名前は聞いたことあるような部分も非常に多く、全体として取っつきやすかったのが救いでした。

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  2. 3)感想

現在は研究職から開発職へと異動しましたが、依然として業務内容は大きく変わっていないため、本試験で学んだ各種バイオインフォマティクス関連の知識は今後も有効な治療薬の無い患者様方を救うために十分役立てていけるだろうと思っています。

余談①;計算科学の範囲は初めて接する概念もあり、その後基本情報技術者試験を受けたのですがその際非常に役に立ったと感じています。

余談②:本試験の範囲として、システムの安定性解析等システムズバイオロジーの分野まで含まれていたことに驚きました。その点ファーマコメトリシャンとしての知識も活かすことができました。

 

 

クロスタス株式会社

小田 俊之(2022年度首席合格者)*所属は受験当時        

 

1)受験の背景
受験当時私はタンパク質構造予測(ご多分に漏れず AlphaFold2 関連です)に関する業務をフルタイムで行っていました。
バイオインフォマティクス技術者認定試験は 2020 年度に一度受けたのですが、一つの業務に集中して取り組んでいますと、他の分野の知識が疎かになってしまうので学び直しの意味で受験しました。
また、JSBi 学会会員ですので、年会費が無料になるという点も考慮しました。

2)試験勉強


受験数週間前から予想以上に忙しくなってしまい、受験前日に過去問一年分、当日朝に過去問一年分をやり直しした程度でした。

3)感想
認定試験に対しては、広範な領域から抽出された基礎レベルの問題が多く、修士課程以上の人であるならば合格点には届くのではないかな、と思っています。(しかし私は毎年数問分からない問題があるので、偉そうなことは言えません。)
今回の試験においては、主席合格を頂けたというのは大変恐縮ではあるのですが、周辺知識の勉強も出来ず、学び直しの意味ではあまり良い結果ではなかったかと思います。また、思ったよりも間違えていました。
最近業務が落ち着いてきたので勉強を再開し、次回は満点を目指して頑張りたいです。

 

*クロスタス株式会社は 2023 年 4 月に株式会社PEZY Computingと合併しました。

​2021年度

大阪市立大学医学部医学科 6年生

藤本 凜太郎(2021年度首席合格者)*所属は受験当時

 

1) 受験の背景

私は現在初期研修医として働いておりますが、医学部在学時にはMD-PhDコースにて細菌学教室に在籍しておりました。研究の一環としてゲノム解析に関わる機会を頂き、勉強を進める中で本試験の存在を知りました。バイオインフォマティクスに関する知識をまとめて勉強できる良い機会だと思い受験させて頂いた次第です。

 

2) 試験勉強

使用した参考書は公式参考書である「バイオインフォマティクス入門」のみで、試験数ヶ月前に読み始めました。生物の基礎的な知識は持っており、また普段プログラミングに慣れ親しんでいることもあり、序盤は比較的とっつきやすかったように思います。とはいえかなりの情報が詰め込まれた参考書で、特に第3章から第6章は初見の分野も多く、読了に時間がかかりました。

その後勉強する時間をあまり確保できず、2週間ほど前から過去問を取り組む形になってしまいました。過去問で間違えた問題を中心に本を読み直しつつ復習しましたが、試験本番は過去問と類似した問題も多く、結果として高得点に繋がったと思っています。

 

3) 感想

最後になりましたが、この度首席合格となりましたことを非常に光栄かつ喜ばしく思っております。本試験の勉強を通して、バイオインフォマティクスの基礎を幅広く学ぶことができましたが、経験面ではまだまだ実力不足を感じておりますので、今後はより実践的な力を身につけられるよう精進いたします。また、医師としても、生命科学と情報科学の技術の両方を兼ね備えた人材として、医療の発展に少しでも貢献したいと考えております。

 

 

住友化学株式会社

加納 花穂(2021年度首席合格者)

 

1)受験の背景
私は構造生物学の研究で博士号を取得後、企業で研究員として勤めています。この試験の存在は学生時代(2018年以前)から知っていたのですが、当時は研究者としての実力があれば資格は要らないと思っていたため受験は考えませんでした。しかし社会人としての今後のキャリア形成において、自分の能力を客観的に示すことの必要性を感じるようになり、生命科学と情報科学の素養を示すため今回の受験を決めました。

2)試験勉強
勉強方法としては、参考書の「バイオインフォマティクス入門」を何回か通読した後、過去問を解きました。その過程でわからない点があった時は学生時代の教科書を見返したり検索したりして調べ、知識を補強していきました。過去問においては「適切な記述を選ぶ」もしくは「不適切な記述を選ぶ」タイプの問題の正答以外の選択肢からも学ぶことが多かったです。

3)感想
バイオインフォマティクスの関係する分野は広いですが、受験という目標と、よくまとまっている参考書があるおかげで大変勉強しやすくなっていると思いました。
私の場合、構造解析と情報科学の分野は知っていることが多かった一方、遺伝・進化解析の分野は馴染みが薄かったので勉強になりました。またこれまで使っていた配列アラインメントやBLASTなどの手法についても、中身をよく分かっていなかったのですが今回理解が深まり、より適切に使用できるようになったと感じます。
試験問題には模擬データを解釈するような設問もあり、実際の研究でこのような解析をする場面があるのではないかと想像しながら楽しく取り組みました。
本試験はバイオインフォマティクスの入門にあたる基礎的な内容ですので、今後実務に活用していきたいと思います。

 

京都大学医学部医学科 6年

桑原 傑(2021年度首席合格者)*所属は受験当時

 

1)受験の背景

 私は現在、国立病院機構函館病院にて初期臨床研修医として働いています。昨年までは京都大学iPS細胞研究所にて学生アルバイトとしてRNAを用いた人工遺伝子回路の構築や細胞制御に関する研究に従事しておりました。所内にてバイオインフォマティクスの勉強会が開催されていたり、研究に応用する事例を見聞きするなど、幸運にもその有用性について知る機会が多かったように思います。私は将来は腫瘍に関する基礎研究をするつもりであり、時間に余裕のある学生のうちにバイオインフォマティクスの勉強をしておきたいと考えるようになりました。そこで学会ホームページにてこの試験の存在を知り、受験させていただきました。

 

2)試験勉強

 勉強に用いた書籍は学会公認の参考書である「バイオインフォマティクス入門」のみでした。10日ほどかけてこの本を通し読みし、その後1日に1回分ずつ過去問を解いていきました。その際に、知らなかった内容を穴埋め問題形式でまとめておき、毎日復習しました。生命科学と統計学以外の分野は知らないことだらけといった感じでしたが、参考書が非常にわかりやすかったので理解に苦しむことはありませんでした。

 

3)感想

 試験の勉強を通してバイオインフォマティクスの概観を把握することができ、その適用範囲の広さに驚かされました。バイオインフォマティクスは生命科学系の基礎研究に従事する全ての研究者にとって避けて通ることのできない分野になりつつあると思います。また、がん遺伝子パネル検査をはじめとしてバイオインフォマティクスに基づく様々な技術が臨床応用されているために、臨床医にとっても知っておかねばならない分野になりつつあると言えるでしょう。

 本試験のように勉強した内容をアウトプットする場が存在することは、学習内容を定着させるに当たって非常にありがたいことだと思います。バイオインフォマティクスに興味を持った方はぜひ本試験の合格を目標の一つとして勉強されてみてはいかがでしょうか。

​2020年度

東京大学大学院薬学系研究科

伊藤 慶(2020年度 首席合格者)

 

1)受験の背景
私は東大薬学部の博士課程1年生であり、細胞分裂に関する研究を行っております。所属する研究室はウェットな実験を中心としていますが、私自身は情報学やバイオインフォマティクスを最大限生かした次世代の研究者になりたいと考え、日々精進しております。
今回、バイオインフォマティクスについて調べている中で、技術者認定試験の存在を知りました。生命科学分野・情報科学分野・バイオインフォマティクス分野の三分野から構成されている本試験は、バイオインフォマティクスを活用する研究者になるうえで必要な知識を得るのに最適であると思い、受験を決めました。

2)試験勉強
公式の参考書である、「バイオインフォマティクス入門」を購入しました。第一章の生物学の分野は専門ですのでわかることも多かったのですが、第二章情報学分野、第三章ー第六章のバイオインフォマティクスの分野は体系的にまとまっており、大変参考になりました。一つ一つのテーマに関して2ページでまとめられており、一日少しずつ読んでいくのに最適でした。勉強に際しては一冊のノートを用意して、わからない内容があればまとめて、あとで読み直すという方針で行いました。
また、東大農学系研究科が開講しています、「アグリバイオインフォマティクス教育研究ユニット」を履修しました。本講義においては、配列・構造・進化・オーミクスなどの幅広いバイオインフォマティクスの分野に関して理論を学ぶとともに、Rを用いた実践的な解析を学ぶことができました。実践的な解析によって、知識をより身につけることができたと感じます。
最後に、ホームぺージに掲載されている「バイオインフォマティクス技術者認定試験出題範囲」に記載されている単語を確認し、理解していない単語があれば調べ、覚えることを繰り返しました。重要語がまとまっているこの出題範囲を理解することは、バイオインフォマティクスという広い分野の様々な知識を得るのに大変勉強になったと感じています。

3)感想
試験問題には過去問と似ているものが半分近くあり、残りが新規の問題という構成だったと感じました。前者に関しては、公開されている過去問は全て解いていたので、概ねできた自信はありました。CBT試験であるため、解答終了後にその場で即座に結果が表示されました。正答率を例年と比べると首席にかかる可能性もあるかと期待していましたが、期待がかなって大変うれしく思い、また光栄です。今後とも精進したいと思います。
バイオインフォマティクスはとても面白い分野だと思います。今回の試験でも、「こんなこともバイオインフォマティクスでわかるのか」と楽しみながら勉強させていただきました。生物学を研究するのであれば、必修の知識だと思います。生物学を専門とする全ての方に対して、本試験を目標としてバイオインフォマティクスを学習することを推薦いたします。
最後になりますが、このような学習の機会を提供していただいた学会関係者の方々に深く感謝いたします、ありがとうございました。
 

2019年度

大阪大学医学部
菅波 修司 (2019年度 首席合格者)

1.受験の背景
私は現在、大阪大学の研究室でsingle cell RNA-seq解析の勉強をさせていただいております。また、同志が集う大阪大学医学部情報医科学研究会(阪医python会)にも所属しております。バイオインフォマティクスに出会ったのは2年前であり、それ以降は研究室に出入りさせていただいたり前述したpython会の先輩方に指導してもらうことでバイオインフォマティクスの勉強をしてきました。今回は、友人よりバイオインフォマティクス技術者認定試験について教えてもらい、もう一度知識を1から整理するいい機会だと思い試験を受験することといたしました。

2.試験勉強
まずは学会公認の「バイオインフォマティクス入門」を1通り読むことから始めました。生物の分野についてはもともと知っていることが多かったので楽に読み進められましたが、それ以外の分野については自身の今までの知識が付け焼刃であったこともあり読むのに苦労しました。ただ、この参考書は各テーマについて要点が分かりやすくまとめられていたため、1通り読み内容を理解することでかなり効率よく知識を深めることができたと思います。
参考書を1通り読んだ後は、過去問を解きわからなかった部分を調べる、という作業を繰り返しました。これも自分が思っていた以上にわからない部分が多く、非常に勉強になりました。

3.感想
バイオインフォマティクスは広い分野であり、網羅的に知識を深めることがなかなか難しいと思っていたので、今回の試験の勉強は非常にためになりました。今回得た知識を基盤として、さらなる知識をこれから吸収していければと思います。 バイオインフォマティクスはとても奥深く面白いです。本試験には勉強しやすい参考書があり、試験問題も教育的な問題が多いので、今全然知識がないけど興味はある、という人にはぜひ本試験をきっかけとしてバイオインフォマティクスの勉強をしていただければと思います。

平成30年度

東京大学教養学部
山内 直寛 (平成30年度 首席合格者)

AI,ディープラーニングといった言葉が世間をにぎわせ、計算機が世界を変革させている現代は、どの分野も情報科学との関わり方が重要となっていると思います。その中でも生命科学と情報科学の融合分野であるバイオインフォマティクスはゲノム解析を中心に大きく発展し、先進的かつ熱い分野だと思います。特に、膨大かつ複雑なデータ群の中から生命の本質的情報を抽出し、解釈可能な形に変換する際に発揮するバイオインフォマティクスの力は目を見張るものがあります。僕は、元々生物学に興味があり、多様ながらも普遍性を保持する生命の魅力に取りつかれて勉学に励んできました。しかし、情報科学のリテラシーを持ち、生物学の研究に応用することが必須になってきているという時代の転換期に、自身のそれらの能力の欠如を痛烈に感じました。よってバイオインフォマティクスの学習をしたいと思い、また学問全体の理解を深めるためにバイオインフォマティクス技術者認定試験の受験を決めました。試験対策としては、主に書籍を読むことと過去問を解くことの二つを行いました。
書籍は、まず学会公認の参考書として紹介されている『バイオインフォマティクス入門』を繰り返し読みました。この本は網羅的な知識を身につけるとともに、基礎的な事象を深く理解し、各分野のつながりを把握するのに役立ったと思います。その後、関連分野の書籍を 5冊程度読みました。この際、学会ホームページで紹介されている参考図書のリストは大変参考になりました。これらの本により、生物学の様々な分野で情報科学が力を発揮することが感じられるとともに、各分野のさらなる深い理解が得られました。
過去問はすべての年について一通り解き、解説を読み込みました。この際にノートに間違えた問題と分からなかったポイント、新たな発見をまとめておくことで、後の復習に役立てるようにしました。アウトプットすることによって、自身の知識の定着度合いを確認するとともに、違った視点から理解を深めることができたと思います。今回の試験とそれに向けた対策を通じて、生物情報科学という学問について網羅的な勉強を行えたので、この分野の全体像を把握し、俯瞰することができたのではないかと思います。
一方で、学習すればするほどこの分野の適用範囲の広さ、奥の深さ、面白さを感じ、まだまだ僕が理解できているのはほんの一部分にすぎず、継続的に学習しなければならないことを実感させられました。また、僕は実際にドライな解析をした経験がなく、そのような技能もないのですが、将来の研究に今回の学習を通じて得られたことを応用し、生命科学分野の謎の解明に少しでも貢献できるように努めていきたいと考えています。
バイオインフォマティクス技術者認定試験は、この分野の理解度を問い、それ自体がさらなる理解を導くような素晴らしい問題で構成されていると思います。また、この試験を通じて学べることは、生物学、情報科学の研究に少しでも携わる人の可能性を大きく広げることができると思うので、受験をお勧めいたします。
最後になりますが、このようなかけがえのない機会を提供していただいた学会関係者の方々に深く感謝いたします、ありがとうございました。

 

平成29年度

大阪大学医学部医学科
安水 良明 (平成29年度 首席合格者)

1. 受験の背景
私は現在、医学生として病院実習を行う傍ら、大阪大学免疫学フロンティアセンター実験免疫学教室で制御性T細胞のトランスクリプトーム解析を主としたバイオインフォマティクスに取り組んでいます。
2年前にバイオインフォマティクスを初めて以来、その面白さに取り憑かれてしまいました。教室の中でバイオインフォマティクス技術者認定試験受験が一時期ブームになっており、それに便乗する形で今回受験いたしました。

2. 試験勉強
バイオインフォマティクス技術者認定試験は試験範囲が幅広く、日頃の研究活動で触れたことのない部分も多く含んでおりました。
しかし、学会公式の参考書である「バイオインフォマティクス入門」はすべての分野を網羅していたため、効率よく勉強することができました。
統計、機械学習分野については、同じ時期に行われた統計検定や、日頃趣味として取り組んでいるkaggle等の知識でカバーことができました。

3. 感想
研究を初めてまだ日が浅いため、バイオインフォマティクスに対する体系的な理解が足りていないと感じていました。
しかし、本試験では網羅的に分野を横断しているため、本試験を通じてバイオインフォマティクスの骨組みを偏りなく作ることができたと感じました。
今後は、この骨組みをもとに、しっかりと肉付けしていきたいと思う次第です。今回は、貴重な勉強の機会をいただき、ありがとうございました。

東京大学 定量生命科学研究所

 



須谷 尚史(平成29年度 首席合格者)

私は元来ウェットの研究者ですが、この5年ほどの間にインフォマティクスの要素を研究に取り入れるようになってきています。必要な知識はその場その場で学んできたのですが、このようなon-the-job-training 方式ではなかなか身につかない基礎的な事柄が残っていると感じたので、本試験の対策を通じて改めて基本的なことを勉強してみようと考えました。
試験対策は推奨テキスト(「バイオインフォマティクス入門」)で行いました。このテキストには、バイオインフォマティクスの初学者が知っておくべきことが網羅的にかつ簡潔にまとめられていると思います。一つのトピックの解説が見開き2ページに収められているので、ちょっとした空き時間での勉強に便利でした。過去問も解いてみましたが、テキストがしっかり理解できていれば及第点に十分達するのでないかと思います。
この試験の特徴の一つは扱う内容が幅広いことだと思います。範囲の全てについてまんべんなく学ぶというのはなかなか難しいことなので、受験という形を借りて勉強することは有意義だったと思っています。アライメントや系統樹などはウェットの研究者にとっても馴染みの深いものですが、実際どのように作成するのかはあまり理解されていないと思います。このようななんとなくわかったような気になっていた事柄について理解を深めることができ、良い機会だったと考えています。
これから研究の現場などでバイオインフォマティクスを専門的に学んでいこうとしている人にとっても、本試験は必要となる基礎を効率よく学べる良い機会となると思います。ぜひ上手に活用なさってください。

平成28年度

パーソルテクノロジースタッフ株式会社
稲森 稔 (平成28年度 首席合格者)

私は自動車会社でDNAマーカー技術の開発に携わっています。バイオに関わってから約4年になります。

4年前SEとしてのお話を頂いたとき、「バイオインフォマティクス」という耳慣れない言葉を電話で聞きました。検索したところ、それは非常に広範囲な分野に亘っており、雲をつかむような案件だと思った記憶があります。それは3年半後に再び思い知らされました。

私は元々アルゴリズムを考えるのが好きで、数学的な問題をプログラムを書いて解くサイトで活動しています。実はそのサイトを参考にしたバイオインフォマティクスのサイトROSALIND(http://rosalind.info/)があると知り、片っ端から問題を解いていきました。配列解析は業務でマッパーやアセンブラを開発していたこともあって親しみがあり、また系統樹解析は再帰アルゴリズムに慣れていればさほど苦も無く解けるものでした。しかし、中には問題文を読むだけではわからない前提がある問題もあり、アルゴリズムとは違う難しさを感じました。既存のソフトを使うだけでは飽き足らない方は、このサイトでコーディングの訓練するとよいかもしれません。

この試験については最初にどこから聞いたのか記憶にありません。ただ、ある会社の方から、うちの部署にはバイオ出身の人間はいないがバイオインフォマティクス技術者認定試験には全て合格している、と勧められました。そのとき、この試験に合格すればある程度はバイオを勉強した証拠にはなると思い、受験を決意しました。

最初に過去問を見たとき、問題の最初のほうだけ見て全く歯が立ちそうにありませんでした。その後いろいろなバイオの本を読み、生命科学の分野もそこそこ解けるようになりました。本格的な受験勉強をはじめたのは試験の2か月半前です。繰り返しテキストで勉強することで広範囲な知識を頭に入れることができました。しかし、普段DNAしか業務で取り扱っていない私はタンパク質についての知識がどうしても入ってきません。ここはタンパク質の本で補いました。試験1週間前からは過去問を解いて本番に備えました。問題は4択のマークシートとはいえ、いわゆる受験テクニックが通じるものがなく、きっちりとした知識が問われていると感じました。細かい話ですが、問題文の「もっとも適切なもの」と「もっとも不適切なもの」を読み間違えて不正解することがしばしばでした。知識が入っていないとこうなります。本番では問題のこの部分に必ず下線を引くようにしました。

私は今後もバイオに関わっていく意思はありますが、2年後どうなっているか、こればかりはわかりません。しかし、「21世紀の数学の恋人は生物学」などと言われるように、数学と生物学と、そしてコンピューティングのクロスオーバーするところに何かエキサイティングなものがあるような気がしてなりません。自分に何かができるのかはわかりませんが、何かができればなと思っています。

 


 

京都大学大学院医学系研究科
小山 智史 (平成28年度 首席合格者)

1. 受験の背景
実験系の研究室に属しております。近年のハイスループット実験系(マイクロアレイや高速シーケンサ、質量分析など)のデータ解析にはバイオインフォマティクスの知識は必須で、必要に駆られて勉強しているうちに面白さを感じ、独学で勉強を始めました。しかし、この分野の体系的な教育を受けたことがなかったため、バイオインフォマティクスにおいて一般的に用いられる用語や概念についての知識が決定的に不足しており、解析手法について理解できない場面も多々ありました。このようなこともあり知識の充足を目標に受験することを決めました。

2. 試験勉強
試験の構成自体が教育的であり、特定の分野の詳細よりもバイオインフォマティクスに関する幅広い知識の獲得が目的とされている様に思いました。このため、私は受験勉強の第一目的を自分の研究内容と直接の関係が少なくこれまで接する機会が少なかった分野についての知識の補充とすることとしました。このような目的にあたっては学会公式の参考書「バイオインフォマティクス入門」がよくまとめられており大変参考になりました。全く基礎知識がない分野についても無理なく学習を始めることができるように工夫されています。まず過去に出題された問題を解き、間違った問題やあやふやな知識について該当の箇所を確認する、という手順で効率よく勉強することができました。そうは言っても本書の内容は基礎的な知識にとどまらず、何度読み返しても発見があり大変勉強になりました。

3. 感想
上でも述べましたように、試験自体の目的がバイオインフォマティクスに関連する分野の知識を幅広く獲得する、という事にあります。独学でバイオインフォマティクスの勉強を始めるとどうしても知識が特定の分野に偏りがちになりますので、このような方にとっては知識の底上げと確認に最適だと思います。私のような実験系研究者にとっての受験のメリットはとても大きいと思いました。最後になりましたがこのような素晴らしい学習の機会を提供頂きました学会関係各位には感謝いたします。

株式会社 日立製作所 研究開発グループ

 



安田 知弘 (平成28年度 首席合格者)

1. 受験の背景
バイオインフォマティクスには学生の頃に出会い、会社の業務や社会人博士課程でも取り組んできました。しかし、自分の研究に直接関係する分野はその都度勉強するものの、多くの分野を幅広く学んだことはありませんでした。
この試験は、狭い専門にとらわれずにバイオインフォマティクスの幅広い知識を持っているかを問うものだと聞き興味を持っていましたが、経験がない分野で自分の知識がどこまで通用するか自信はありませんでした。しかし会社で、バイオインフォマティクス以外の分野をバックグラウンドとする人達が果敢にこの試験に挑戦して次々に合格していることに刺激を受け、私も受験を決意しました。

2. 試験勉強
過去問を解いたところ、学生時代の専攻であった情報科学分野と、バイオインフォマティクス分野のうちこれまでの研究で関わってきた分野は、あまり問題がなさそうでした。そこで、特に苦手の生命科学分野に絞って関連書籍を読み、勉強しました。

3. 感想
試験当日は、学部生でも簡単に解けそうな数学の解法を忘れてしまって慌てる など、あまりできは良くなかったと感じていましたが、予想外に首席合格者となることができ大変嬉しく思います。
バイオインフォマティクスの幅広い分野を整理し自分の実力を客観的に把握することができるこの試験は、大変貴重だと思います。ぜひ多くの人が本試験をきっかけとしてバイオインフォマティクスの技術を身に付け、アカデミアはもちろん弊社を含む産業界でも活躍していただければと思います。

 

平成27年度

バイオインフォマティクス技術者認定試験合格体験記
東京大学・趙 慶慈 (平成27年度 首席合格者)

1. 受験の背景
私は現在東京大学薬学系研究科の生命物理化学教室に所属しています。そこではタンパク質の動的な構造変化をNMRによって観測することを大きなテーマにしており、私自身は細胞内での特定のタンパク質の構造変化を軸に遺伝子の機能を細胞内環境下で調べることを目的にしています。
この研究テーマの中心にある、タンパク質の構造解析やゲノム編集による遺伝子操作といった技術およびそのバックグラウンドは、研究の世界に入った自分にとって初めて触れるものばかりで、いろいろ勉強していくうちに日本バイオインフォマティクス学会が主催となってこの試験を行っていることを知り、現状の自分の知識の確認および試験勉強による知識の習得のため受験しました。

2. 試験勉強について
バイオインフォマティクスという学問自体は歴史が浅く、バイオインフォマティクスを用いる分野すべてを網羅した教科書が無い中でこのような広い範囲の試験勉強に取り掛かることは主にモチベーションの問題で困難でした。
その中で今年度バイオインフォマティクス学会により「バイオインフォマティクス入門」が刊行され、状況は一変しました。この本は試験の内容を網羅しており、この本の熟読によって試験に取り組むことに必要な知識を獲得するとともに、「この一冊でよい」という安心感が試験に対する明確なモチベーションとなりました。
もう一つの試験勉強の柱は学会HPで公開されている過去問の演習です。
この試験の特徴としてほとんどの問題が4択でかつ多くの問題において不適切なものを選ぶという点にあると思います。すなわち1つの問題で3つ正しいことを学ぶことができるといえます。過去8年分にあたる問題を一通り解き、逐一解説を参照することで上の本で得た知識の確認だけでなく、勉強が不足していた領域を隅々まで満たすかのように新たな知識を獲得することができました。

3. 感想
自分はタンパク質構造解析のバックグラウンドがあるため、生物学的な知識およびタンパク質を対象にしたバイオインフォマティクスの知識についてはある程度有していましたが、上に述べたように、この試験自体が教育的であるため過去問演習、および本番の試験会場で問題を解くたびに今まで知らなかったことや曖昧だった知識を何度も確認し、自分のバイオインフォマティクスへの理解が深まることが実感できました。
この試験の内容は生物を研究する者の必修の教養であるといっても過言ではないと考えます。プロフェッショナルとして生物学を研究する方以外にも、現在生物学を体系的に学んでいる途中の学生にもこの試験を強くお勧めいたします。

平成26年度

慶應義塾大学・岡村 勇輝(平成26年度 首席合格者)

1. 受験の背景
私はまだ学生に過ぎず、研究の現場に立ったことは当然なく、また生物学の専門的な知識を有している訳でもありません。しかし、中学・高校で、趣味の範囲ではありますがプログラミングを行った経験があり、生物学の問題に情報科学的な手法で対するということには強い関心がありましたので、この分野の勉強をする良い目標としてバイオインフォマティクス技術者認定試験を受験させていただきました。

2. 試験勉強
バイオインフォマティクスに関連する書籍を選んで一通り読み、その後に過去問をダウンロードさせていただいて解いて見直しをするという具合に勉強しました。特に情報科学分野の勉強については、過去にも受験体験記に書かれている方がいらっしゃいますが、情報処理技術者試験の参考書を利用するという方法は有効だと感じました。

3. 感想
受験を決める前は専門の勉強に入っていない学生が受験するのに適したレベルの試験なのか不安でしたが、結果的にはバイオインフォマティクスを勉強するにあたって非常に良い目標となりました。

平成25年度

バイオインフォマティクス技術者認定試験合格体験記
東京大学・向野 颯馬 (平成25年度 首席合格者)

1. 受験の背景
私は、東大院農の水圏生物科学専攻という水生生物を主に扱う専攻の水圏生物工学研究室に所属しており、現在修士1年です。研究室では次世代シーケンサを用いた研究が中心に行われています。学部生時代はデータの解析を先生や先輩に見て頂いていたのですが、院に進学したとき、もっと自分でデータを扱えるようになろうと思い、当大学院のアグリバイオインフォマティクス教育研究プログラムに参加しました。とりあえずコースは履修したのですが、もう少しアウトプットして知識を定着させたいな、と思っているところで、プログラム内でこの試験をご紹介いただきました。それがきっかけで、もともと検定などを受験するのが好きということもあり、受験させていただくことにしました。

2. 試験勉強について
ホームページからダウンロードできる過去問を解きました。各分野でまとまっている本などを読み、包括的な知識をつけるのが理想だとは思いましたが、なにせ範囲が広範なので、過去問で問われている切り口についてだけでも知識をつけていこうということにしました。
問題の難易度はそれぞれの分野の専門の人にとってはすぐ分かるようなレベルかと思いますが、基本的に自分の専門外の分野の問題が数多く出てくる、そういう試験だと思います。したがって、いかに自分の専門外のところの知識を浅く広く集められるかというところがポイントになると思います。
個人的には20種のアミノ酸の構造式と3文字および1文字表記は覚えておくと色々な問題に応用ができて良かったかな、と思います。

3. 感想
技術の進歩は、昔からすれば夢のようなスピードで大量のデータを得ることを可能にしました。しかし、ゲノムの配列が決定できるようになり、これで生命活動や遺伝的多様性の仕組みがスッキリクリアにわかる!と思ったら、意外とわからない。タンパク質をコードしている部分は1%程度しかなく、結局何をしているのかわからない配列がほとんど。「見える」けど「読めない」、これが今の生命科学の突き当たっている壁であり、そこに挑戦しているのがバイオインフォマティクスなのではないかな、と思っています。
そしてその壁に挑むには、生理学、生化学、分子生物学、有機化学、統計学、インフォマティクスといった幅広いスケールの知見が必要とされるように感じています。この試験で身に付けた知識は、自分で研究していくためというより、他の専門分野の方と連携し、その壁を越えていくための知識だと捉えています。この合格を機に、生命科学の発展に多少なりとも寄与できるよう一層努力をしていきたいと思います。

平成24年度

バイオインフォマティクス技術者認定試験合格体験記

京都大学・中根 崇智 (平成24年度 首席合格者)

1. 受験動機
私は大学院で wet な実験系の研究をしてきました。プログラミングは昔からの趣味で、研究関係でも、解析を自動化したり結果を可視化するプログラムを書いたりしています。そうしているうちに、自分の興味や適性として、wet な実験よりもデータを解析したり、そのためのプログラムを作るような dry な仕事に強く惹かれるようになりました。また、次世代シーケンサ(NGS)などの技術革新が著しく、大規模データとその数理解析を元にしたこれまでにないタイプの研究が発表される時代です。こうしたアプローチへのリテラシーも身につけたいと思っていました。そこで、自分の能力を客観的に測る「腕試し」として受験してみることにしました。

2. 勉強法
勉強としては、Webサイトに掲載されている過去問を解きました。1年分解いてみて合格点には十分余裕があることが分かったのですが、せっかくの機会なので、これまであまり触れることのなかった分野を補強しておきました。最近の問題には簡単な解説も付いていて、とても助かりました。解説でも疑問が残る点については、ネット上にある講義資料などを参照しました。実際に手を動かしてデータベースを検索してみたり、プログラムを走らせたり書いたりしてみるとなお良いのでしょうが、残念ながらそこまでする余裕はありませんでした。

3. 問題の印象
出題される問題の質も高いと思います。いわゆる「問題のための問題」が多いとやる気を削ぐものですが、そういった本質を離れた悪問はほとんどなくて、その分野を知っていれば自然と解ける良問が大半でした。また、問題文で解き方が誘導されている問題も多いので、丸暗記が必要な領域は意外と少ないはずです。

4. まとめ
主席で合格することができ、とても嬉しいです。これで満足することなく、今後も学習を続け、自分の研究に活かすようにしたいと思っています。ありがとうございました。

平成22年度

 

バイオインフォマティクス技術者認定試験合格体験記

安達 竜太郎 (平成22年度 首席合格者)

製薬会社の研究所に勤務しております。仕事では主に生物学や生化学に関わることが多いですが、必要に応じて配列データベースの検索や発現解析なども行います。最近、様々な公共あるいは市販のデータベースが充実してきている中で、インフォマティクスを活用して効率的に有用な情報を抽出できないかと考えておりました。そんな折この試験のことを知って、これまでの自分の知識を試験勉強の中で整理し直すことは、応用のためにも有意義だろうと考えて受験しました。 試験対策としては、出題範囲の主要キーワードがまとめられていますので、漏れがないように幅広く知識を整理しました。生命科学分野は、私の仕事と直接関係する内容なので、特に対策の必要はありませんでした。情報科学分野は、学生時代のプログラミングの経験などが役立ちました。バイオインフォマティクス分野については、これまで体系的に学習する機会がありませんでしたので、過去の試験問題を中心に勉強しました。配列解析が全ての基礎になっていることを意識しながら、断片的な知識を相互に関連付けて調べていくと理解が進みました。バイオインフォマティクス推進センターのホームページでは、本試験を意識した講義資料を入手することができましたので、参考にさせていただきました。 今回、試験勉強の過程で、自分の知識が体系的に整理されたことは、非常に有意義でした。データベース検索の基本的な仕組みなども出題範囲として含まれますので、NCBIの検索などでも、背景を理解しながら解析を進めることができるようになると思います。また、出題範囲のキーワードをもとにして、さらに勉強を深めていくことができますので、バイオインフォマティクスをこれから志す方にとっても、よいきっかけになると思います。

 

 
 

佐々木 剛 (平成22年度 首席合格者)

私はポスドクとして分子進化の分野で研究を続けてきたのちに、現職(バイオベンチャーの研究員)に就いてからは抗体配列解析やデータベースの作成等、いわゆるdry の研究開発を主に担当しております。それまでの知識は自分の研究を進める上で必要な分野のみに偏っていたと感じていたところで、 バイオインフォマティクス技術者認定試験のことを知り、 創薬にバイオインフォマティクスを活かして仕事をしていく上で、 自分の弱点の把握と情報収集をかねて、受験を思い立ちました。 製薬業界に入ってから半年過ぎたところでしたが、 バイオインフォマティクス担当者が私一人だけという職場で、 客観的にバイオインフォマティクスに関しての 評価をしていただこうという考えもありました。 思い立ってから受験日までに十分な時間が取れず、 JSBiのウェブサイトにあった過去問題を一通り解いてみたところで 受験日がやってきました。 受験することで学習に対するモチベーションが向上することが最も大きな効果ではないかと思いますので、 受験対策をする時間があまりとれなかったのは残念でしたが、 集中して過去問に当たるだけでも当初の目的の多くが達成されたと思っております。 初めて見る用語について調べることで新しい知識を得ることもできました。 これから受験をお考えの皆さんはそれぞれに目的も背景も 異なるかと思いますが、ぜひこの機会を有効に活用して頂ければと思います。

 

平成21年度

バイオインフォマティクス技術者認定試験受験体験記

東京大学・廣瀬 農 (平成21年度 首席合格者)

1)個人的背景と受験の動機
私は現在植物生理の研究に関わっており、以前は微生物生態の研究をしておりました。自分自身の研究はいわゆるウェット系ですが、研究・実験の方向性を検討するため、バイオインフォマティクスを活用した論文を理解する能力を必要としています。また、バイオインフォマティクスと関連が深い、統計処理・データベース検索・スクリプト言語によるデータ抽出等の作業も日常的に行なっております。したがって、バイオインフォマティクスを専門としているわけではありませんが、比較的関わりが深い分野で活動していると言えます。
このような背景からバイオインフォマティクスには以前から関心があり、東京大学で開講されているアグリバイオインフォマティクス人材養成プログラム課程を修了しており、その際に得た知識が身についているかを確認したいと考えたことが今回受験した主な動機です。また、特任研究員という立場から能力の第三者証明が必要という副次的動機もあり、受験を思い立ちました。

2)受験対策
私の場合、生命科学分野は本来の専門分野であり、過去問題を解いた感触では特に対策は必要無いと思われました。情報科学分野は情報処理技術者試験で得た知識が役立ちました。情報処理技術者試験未受験の方であれば、いわゆる午前試験対策の問題集などが参考になると思います。
後半のバイオインフォマティクス分野については、過去問題と前述のABI人材養成プログラムの際のノートを中心に知識の確認・拡充を行いました。知識が不確かな用語・概念については、WWWが勉強の助けになりました。また、オープンなデータベースで実際に検索を実行したり、データをダウンロードして自分で処理してみることも理解を深めるために有用でした。

3)受験を終えて
解答の公表と結果通知が比較的早く、知識の確認に役立ちました。また、結果として正解だった問題でも選択肢の一部に初見の用語があるなど、学習を進める手がかりとしても有用でした。私と同様にバイオインフォマティクス隣接分野で活動中で本試験に興味を持たれた方には、ぜひ受験をお勧めしたいと思います。

平成20年度

バイオインフォマティクス技術者認定試験を受験して

東京工業大学・並木 洋平 (平成20年度 首席合格者)

私は大学で情報工学を専攻しており,現在は修士課程1年に在籍しています.学部4年生の時に研究室に所属してからは主にバイオインフォマティクスを研究テーマとして扱っています.
私がバイオインフォマティクスについて本格的な勉強を始めたのは昨年の研究室所属以降で,割と最近でした.それまでは主にコンピュータサイエンスの勉強をしていましたが,一方で生物やバイオインフォマティクスについての勉強はほぼ全くしていませんでした.そこで,この分野の研究に必要な知識を定着させるべく,JSBiのバイオインフォマティクス技術者認定試験を受験しました.
試験勉強は主に認定試験の過去問を使って行いました.試験で出題される問題は主に三種類あり,生物学,コンピュータサイエンス,バイオインフォマティクスに関する問題が出題されます.私は普段からコンピュータサイエンスの勉強をしていたため,コンピュータサイエンスの分野の問題は比較的容易に解くことができました.その一方で,生物学やバイオインフォマティクスの分野の問題については知識が浅く,認定試験の過去問を見ても解答が分からない問題が多かったため,参考書を使って過去問に出てきた内容をひたすら調べて勉強しました.知らないキーワードも多く勉強はなかなか大変でしたが,その分実りある試験勉強になったと考えています.
この試験を通じてバイオインフォマティクスとそれに関連する分野の基礎知識が身に付き,これからバイオインフォマティクスの研究をしていく上で自信を持てるようになったと思っています.バイオインフォマティクスの勉強を始めたばかりの方は基礎知識を定着させる勉強の一環として,自信のある方は力試しとして受験してみるとよいのではないでしょうか.

 

平成19年度

バイオインフォマティクス技術者認定試験を受験して

東京農工大学・小柳 亮 (平成19年度 首席合格者)

私がバイオインフォマティクス技術者認定試験を受験したきっかけは、当時DNAマイクロアレイ法を用いたトランスクリプトーム解析を始めたところで、大規模解析から得られるデータから有用な情報を抽出して、自分の持っているデータが何を示しているのかを知るためには、それまで知らなかったバイオインフォマティクスの手法を学ぶ必要があると感じたことでした。大規模発現データの解析用にはアプリケーションソフトウェアが市販されており、私もそれらを用いてデータを解析していました。しかし、そこで用いられている情報処理の手法を適切に選択するためにはやはりそれぞれの手法についての正確な理解が不可欠であり、それは私のように生物系の出身で、「コンピュータは好きだけど、情報処理については学生実習でBASICを少し習っただけ」というレベルの人間が説明書を見ながらなんとなくソフトを使っているだけではなかなか身に付かないものでした。
バイオインフォマティクスと一口で言ってもそこには様々な内容が含まれており、当然認定試験の出題範囲も広範なものです。マイクロアレイをはじめとするトランスクリプトーム解析はその一部分にすぎませんが、アレイメーカーが提供する遺伝子アノテーションの基礎となっている各種データベースはそれ自体がバイオインフォマティクスの範疇にあり、それらのデータベースに収録されている内容はそれぞれがまたバイオインフォマティクス的な解析により得たものであるなど、他の分野においても内容や解析手法に関連する要素を持つものは多く、それらを合わせて学ぶことで理解が深まったと感じています。目前にある課題をすぐに解決するための知識を学ぶだけの独学では(私の場合それが学会発表の直前といった余裕のない時期に行われることが多いのが原因なのですが)、このように直接の関連がない分野や、情報科学の基礎理論といった内容まではなかなか手が回らないので、とてもよい機会になりました。

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