ライフサイエンス分野におけるAI戦略

オーガナイザー:志水隆一 NPO法人バイオグリッドセンター関西

9/27 13:35-15:05

 

21世紀に入り、人工知能(AI: artificial intelligence)とビッグデータは、クイズ番組でのIBM Watsonや囲碁の世界でのGoogle AlphaGoなどの活躍により大きく注目され、その利活用は、自動車の自動運転への応用など多くの産業分野において急速に進展しつつあります。 ライフサイエンス分野においても、IBM Watsonによる癌診断への応用などで一定の成果が上ってきています。しかし、ライフサイエンス分野でのAIとビッグデータの活用は、他の分野と比較するといまだ端緒に就いたところと言えます。 我々はここに、「ライフ インテリジェンス コンソーシアム(LINC)」を発足させ、製薬・化学・食品・医療・ヘルスケア関連のライフサイエンス分野のためのAIならびにビッグデータ技術を開発することで、関連諸分野の産業振興と、国民の健康寿命の延伸及び生活の質の向上を目指しています。 LINCの主要構成メンバーは以下で、現在約80の機関が参加しております。

LINCは、アカデミアの触媒機能により、IT業界とライフ業界の連携を促進し、IT業界が世界のAI産業競争に勝てる土壌作りを目指すとともに、AI戦略によるライフ業界の産業競争力を加速することを目指します。2016/11/17に発足し、ライフ系企業から150超のテーマを頂き、これらを精査・集約し、現在29のテーマについてプロジェクトとして開発を進めております。2017/7/1から開発がスタートしており、2018/3に年度末の成果報告を行いプロジェクトを評価し継続、終了などを判断します。評価の結果、BtoBへ移行するものを最低1つは出していきたいと考えています。また、これらの個々のアウトプットが次のプロジェクトのインプットとなり、成果がシームレスにつながり一連のバリューチューンを構築することを最終的に目指しております。2年後、3年後をご期待下さい。

医療・創薬分野での研究アライアンスと人工知能研究への期待

江口至洋(理化学研究所客員主管研究員、NPO法人システム薬学研究機構理事)

 医療従事者が疾患別に評価する治療の満足度は薬の存在に大きく依存しており、患者への医療サービスの向上において創薬は鍵になっている。しかし、今に至るも製薬産業は高騰する研究開発費、急速に減少する研究開発効率に悩まされている。そんな中、私にとって2009年Nat Rev Drug Discov誌に出た意見論文”Lowering industry firewalls: pre-competitive informatics initiatives in drug discovery”は印象的であった。その論文は欧米の3つの製薬企業(GlaxoSmithKline, Pfizer, AstraZeneca)の研究者が共同で執筆、投稿したもので、端的に言えば「これまで通り各企業の塀の内で研究を進めるのですか?」と問いかけている。ここでは近年急速に進歩した人工知能研究を共通基盤に、塀の外に出て研究開発を共に進めようとするLINCの取り組みを紹介する。

IT企業のライフ分野におけるAIへの取り組み

丸山文宏(富士通研究所 人工知能研究所)

【フリートーク】製薬企業の限界とAIへの期待

江口氏、丸山氏、塩野義製薬 デジタルインテリジェンス部 奥村利幸氏