合同シンポジウム

日本バイオインフォマティクス学会・日本メディカルAI学会 合同シンポジウム

座長:瀬々 潤 (株式会社ヒューマノーム研究所)

1. 医療情報利活用のための法制度・データベースについて
小松 慶太(内閣府 健康・医療戦略推進事務局)

政府が定める「健康・医療戦略」(令和2年3月27日閣議決定)においては、研究開発に資するデータの連携基盤を構築するとともに、利活用しやすい環境を整備することとされており、それに向けて様々な取組が行われている。医療分野の主な公的データベース及び関連の法制度を概観するとともに、新たな形でのデータベース構築を可能とする制度「次世代医療基盤法」について詳説する。この制度は、様々な主体から多様なデータを収集し名寄せすることを可能とするもので、既に産学問わずデータの利活用が始まっている。本演題では、データ利活用に係る現況を踏まえ、今後の展望についても示すこととしたい。

2. バイオバンク・ジャパンの臨床情報について
鎌谷洋一郎 (東京大学)

バイオバンク・ジャパン(BBJ)は2003年に開始した世界でも古くから整備されたゲノム・バイオバンクの一つで、国内の多数の病院が参加している。患者コホートであるBBJでは、DNA、血清の収集と同時に多様な臨床情報を病院にて収集した。ただし古いコホートであるため、原則として紙カルテを想定した臨床情報収集を行っていた。これまで、これらの臨床情報とゲノムデータを用いたBBJの研究はさまざまな研究成果へと結びつき、また、多数の国際コンソーシアムにも参加し、国際共同研究を行ってきた。BBJでの経験を紹介し、有効な臨床情報収集について検討する題材を提供する。

3. ドメインシフトによる性能の低下に耐えうる脳腫瘍領域の自動segmentation法の開発
高橋 慧 (国立がん研究センター/理化学研究所)

深層学習装置は脳内に発生する神経膠腫の腫瘍領域の自動セグメンテーションを高い精度で行うことができる。しかし別の施設由来の画像に対してタスクを行わせると大きく精度が落ちること、所謂ドメインシフトによる性能の低下が確認されており、深層学習装置の実用化の大きな障害となっている。我々はドメインシフトによる性能の低下を抑え、多施設にて使用可能な脳腫瘍領域の自動セグメンテーション法を模索した。我々は特殊なファインチューニング方法を開発しドメインシフトによる性能の低下を抑えることに成功した。特に我々の手法は20症例以下の症例しか必要としないために、神経膠腫症例の少ない施設において有効な方向であると考えられた。


日本バイオインフォマティクス学会・日本オミックス医学会 合同シンポジウム

座長:荻島創一(東北大学)、浜田道昭(早稲田大学)

5〜7年後のゲノム社会を考える

5〜7年後、だれもがゲノムを読み、だれもがゲノム医療により裨益する社会、ゲノム社会が到来します。このゲノム社会の到来に向けて、医療制度から法制度、情報基盤まで、幅広いステークホルダーにより検討して、医療から研究開発までのゲノム社会をデザインしなければならないフェーズにきています。本セッションでは、「次世代の生命科学・医薬学を切り拓くバイオインフォマティクス」として、5~7年後に来たるべきゲノム社会について医療制度から法制度、情報基盤までを考えます。

1.ゲノム社会の到来に向けたデザイン
荻島創一(東北大学)

2.ゲノム社会の未来を実現するための法的・倫理的課題とは
米村滋人(東京大学)

3.ゲノムデータはだれのものか?
山本奈津子(大阪大学)

4.ゲノム社会に向けた情報基盤とは?
川嶋実苗(NBDC)

5.ゲノム社会とバイオインフォマティクス
浜田道昭(早稲田大学理工学術院)