著書紹介:進化で読み解く バイオインフォマティクス入門(長田直樹著) 

皆さんは「バイオインフォマティクス」と聞いてどのようなものを思い浮かべるでしょうか.ゲノム解析,タンパク質の立体構造,システム生物学,メタゲノミクス,機械学習,etc...,人によってさまざまなものを思い浮かべるかもしれません.それほど現在の生物学にコンピュータというものは浸透しており,コンピュータによるデータ解析は生物学の発展に無くてはならないものになっています.
この本は,私が4年前に現職に就き,「生命情報解析学」という学部生向けの講義を始めると同時に書き溜め始めた講義資料を一冊の本にまとめたものです.生物学の知識も情報学の知識も中途半端である学部生でも,資料として読み進められるような内容となっています.
内容を考えるにあたり,そもそも「生命情報」とは何か,というところから始めました.この本が定義する生命情報とは,生命がもつ遺伝情報(DNAとそこから派生するもの)であり,その解析手法を裏付ける原理の紹介が中心になっている本です.分子生物学,遺伝学の基礎から始まり,遺伝子の配列解析が中心となった解説を行っています.古典的な内容も多いですが,最新のトピックも扱っており,近年当たり前のように使われている次世代シークエンサーから得られるデータ解析についても,その概要や基本的な解析アルゴリズムについて触れています.
本書で重点を置いている視点は,タイトルにもある「進化」です.生命がもつ(遺伝)情報は進化の産物ですから,そこから得られるデータを解析するためにも進化の視点は重要な役割をもちます.事実,多くの遺伝子配列解析アルゴリズムは,陰に陽に進化における遺伝子配列の保存性を前提にしています.本書では,進化の原動力であるDNAの突然変異がどのように起こって,どのように個体間や種間の違いにつながっていくかを理解する過程に,多くのページを割いています.あくまでも初学者を対象にした本なので,研究者の皆さんには物足りない面もあるかと思いますが,バイオインフォマティクスを勉強したいけれどもどこから始めていいかわからない,という方が周りにいらっしゃいましたらぜひ勧めていただけると幸いです.

進化で読み解く バイオインフォマティクス入門
長田 直樹 (著)
232ページ・定価 3,200円+税
2019年6月・森北出版 刊

公開日:2019.07.05