学会活動

著書紹介:生命はデジタルでできている  情報から見た新しい生命像 (ブルーバックス、田口善弘著)

2020.05.21

拙著は日本バイオインフォマティクス学会会員諸氏向けの本ではない。では、にも拘わらず、なぜ、学会の会員向けに拙著を紹介するのか。バイオインフォマティクスという学問は有体に言って継子扱いだと思う。某情報系学会の偉い人が「バイオインフォマティクスとかいうよくわからない分野」と暴言を吐いたのは記憶に新しいし、かたや生物の分野に行けば、某有名生命系学術雑誌に「他人がやった実験結果を解析しているだけのリサーチパラサイト」なる暴言がなんと巻頭言になってしまったことさえある。そういう意味では(特に日本では)居場所がない。それは1つにはそもそも「こういう分野がある」という認識が世間一般で薄いからだと思う。分子生物学の啓蒙書はたくさんあるけれど、バイオインフォマティクスを生業とする研究者の手になるものはまだまだ少ないと思う。本書はそういう意味で「世間にこういう分野がある」と認識してもらえればと思って一念発起して書いた本だ。皆さんが読まれても「浅い考察」や「不十分な知識」が目に余るだけだとは思うけれど、生命や情報に専門的な知見がない人でも読めるように書いたつもりだ。だから、「お前、何研究しているの?」といわれたら、ぜひ、この本を勧めてみてほしい。分野的にはゲノムからRNA,プロテオーム、メタボローム、マルチオミックス、創薬と自分がかじったことがある分野は浅く広くカバーしたつもりだ。それでも、例えば、メタゲノムとかまでは手が出なかったが、多かれ少なかれ、会員諸氏の研究分野に「カスって」いるところはあるように頑張ったつもりだ。バイオインフォマティクス分野の一般への認知の一助になれればと期待している(ただし、一言もバイオインフォマティクスという言葉は使われていない!)。最後となるが、勝手にある「造語」を導入してしまった。学術的にはなんの根拠もない言葉だが、一般の皆様の人口に膾炙してくれればいいな、と密かに願っていることを付記しておく。

生命はデジタルでできている 情報から見た新しい生命像
https://gendai.ismedia.jp/list/books/bluebacks/9784065195970
田口善弘 (著)
240ページ・定価 1000円(税別)/ 900円(電子版、税別)
2020年5月21日・講談社

 

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