日本バイオインフォマティクス学会 2020年年会 第9回生命医薬情報学連合大会(IBMP2020)

開催趣旨

本大会は平成24年(2012年)から生命医薬情報学連合大会として開催されてきました。第9回目となる令和2年(2020年)の本会は、昨年に引き続き日本バイオインフォマティクス学会と日本オミックス医学会(旧日本オミックス医療学会)の2学会合同大会として、福岡県北九州市北九州国際会議場オンラインにて開催いたします。

様々な生物種のゲノム情報をコンピュータで解析するための学問として始まったバイオインフォマティクスの役割は、これまでに大きな変化を遂げてきました。次世代シークエンサーやハイスループット測定技術の発展により、ゲノムだけでなく、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームなど多階層オミックスデータが得られるようになり、様々な生体分子に対して網羅的な解析が可能になってきました。同時に、コンビナトリアルケミストリーやハイコンテンツスクリーニングなどの技術の発展によって、膨大な数の化合物に関するケミカル情報や生物活性情報も蓄積されてきています。個体差、シングルセル、時空間などを考慮した解析なども可能になり、データの巨大化だけでなく、多様化・複雑化に拍車がかかっています。生命科学は仮説駆動型アプローチに加え、データ駆動型アプローチが隆盛を迎えています。その中で、バイオインフォマティクスの情報解析技術は不可欠です。さらに、バイオインフォマティクスが関わる研究領域は、生命科学だけでなく、医学、薬学、化学、農学、環境学、数理科学、情報科学など様々な領域へと及んでいます。

このようなビッグデータ時代において、バイオインフォマティクスは学術研究だけでなく、産業応用においても期待されています。特に、医療や創薬などヘルスケア分野は、バイオインフォマティクスの力が最大限に発揮できる応用分野です。実際に、がん、神経変性疾患、循環器疾患など様々な疾患に対して精密医療のプロジェクトが進められており、ゲノム・オミックス情報と臨床情報を紐づけて患者層別化バイオマーカーの探索や投薬方針の決定などにおいて、バイオインフォマティクスによる研究開発は不可欠になってきています。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の公募においても、バイオインフォマティクスの専門家を取り入れた体制を有することが求められています。

ここ数年の大きな社会的変化として、人工知能(AI)への期待が大きくなってきたことが挙げられます。この背後にはディープラーニングなどAI基盤である機械学習の発展があります。バイオインフォマティクスの分野でも機械学習は必須の技術であり、生命科学における問題に応じて、隠れマルコフモデル、サポートベクターマシン、カーネル法、スパースモデリング、ニューラルネットワークなど様々な手法が適用されてきました。データから有用な情報を効率的に抽出し、学術研究や産業応用につなげて行くためにも、機械学習はますます重要になってきています。特にヘルスケア分野への応用におけるAI研究の進歩は目覚ましく、医療診断、病理画像解析、バイオマーカー探索、創薬標的同定、ドラッグリポジショニング、新薬分子設計など、AI医療やAI創薬の研究は世界中で活発化しています。

令和2年の本大会では、「データ駆動型研究が切り開くヘルスケア:AI・ビッグデータ時代の生命医薬情報学」というテーマを掲げて開催します。バイオインフォマティクスは学術研究だけでなく、産学連携や社会実装において非常に重要な役割を果たすものです。本大会ではその価値を再認識したいと考えています。大学、研究機関、民間企業、医療機関など、様々な立場の参加者が一緒に議論できるセッションを数多く用意し、異なる視点の融合によって、新しいアイデアを創生できる場になるように、関係者一同、尽力してまいります。バイオインフォマティクスに関心をもつ多くの方々にぜひご参加ならびにご支援をお願いできれば幸いです。

大会長 山西 芳裕

キーワード
バイオインフォマティクス、健康、医療、創薬、AI、ビッグデータ
使用言語
日本語(一部英語での発表も含む)